
はじめに
総資産が1億円を超えると、周囲からは「いい車に乗らないのか」「そろそろマイホームを買ったらどうだ」と言われることが増えます。確かに、どちらもキャッシュで即座に購入できる資金はあります。
しかし、私はあえて車も持ち家も持たないという選択をしています。これは単なる節約ではなく、ITエンジニアとしての合理性と、資産形成の出口戦略(FIRE)を見据えた戦略的な判断です。なぜ私が「持たない」ことにこだわるのか、その理由をまとめます。
なぜ車を持たないのか
1億円という資産があれば、高級車を所有するステータスに惹かれる時期もありました。しかし、冷徹に数字とリスクを計算した結果、私にとって車は「負債」でしかないという結論に至りました。
維持コストと代替手段の比較
燃料費、自動車税、保険料、駐車場代、そして車検や点検費用。これらを積み上げると、地方ならいざしらず、都市部で生活する私にとってはタクシーを利用する方が圧倒的に安上がりです。
実際、会社帰りに疲れた時などは、駅から自宅までの徒歩区間を迷わずタクシーを使いますが、それでも月数回程度。年間のタクシー代は、車の維持費の数分の一にも満たないのが現実です。
交通事故という「最大のリスク」
金銭的なコスト以上に重視しているのが、交通事故のリスクです。自分がいくら気をつけていても、事故の加害者になる可能性をゼロにはできません。人身事故を起こせば、金銭的な補償だけでなく、築き上げてきたキャリアや社会的な信用を一瞬で失うことになります。
「車を運転したい」という強い趣味がない限り、わざわざ自分からこの巨大なリスクを抱え込む必要はないと考えています。
なぜ持ち家を持たないのか
賃貸の「柔軟性」や「ローン不要」という一般的なメリットは言うまでもありませんが、私はさらに「メンテナンス性」と「資産の流動性」の観点から、持ち家をデメリットの大きい投資対象だと判断しています。
管理コストの完全な外注化
システム開発において、サーバーの保守を専門業者に任せるのと同様、住居の維持管理も「外注(管理会社)」するのが最も効率的です。
排水口が詰まったり、設備が故障したりしても、賃貸なら管理会社に電話一本入れるだけで解決します。自分自身の貴重な時間と労力を住宅のメンテナンスに割くのは、非効率極まりないと感じます。持ち家の方で、維持費を積み立てていなかったり、不便を我慢しながら生活しているケースをよく見ますが、それでは「理想の家」が「不自由な家」になってしまいます。
資産の流動性と相続への配慮
不動産はペーパーアセット(株式・預金)に比べて、現金化するまでの時間が非常にかかります(流動性が低い)。また、私が独身で母を扶養している立場上、万が一の際に残された家族が不動産の売却や管理で苦労することは目に見えています。
相続時に最も「分けやすく、使いやすい」のは、間違いなく現金や株式です。家族に手間をかけさせないという点でも、ペーパーアセットに特化するメリットは大きいです。
アセットアロケーションの歪みを防ぐ
世界全体の投資可能な資産を時価総額比率で構成した「グローバル市場ポートフォリオ(GMP)」のデータを見ると、株式が約50%、債券が約45%に対し、不動産(投資対象となる商用不動産やREITなど)の割合はわずか5%程度に過ぎません。
私の1億円のポートフォリオにおいて、数千万円という巨額を一つの特定の不動産に集中させるのは、分散投資の観点から見てリスクが大きすぎます。仮に将来的に不動産を資産に組み入れるとしても、このグローバルな時価総額比率に基づき、ポートフォリオ全体の5%程度が適正だと考えています。1軒の「持ち家」を持つことは、この健全なバランスを根本から崩してしまうことを意味します。
まとめ:持たないことで得られる「自由」
車や家を持たないことは、一般的には「不便」や「妥協」と捉えられがちです。しかし、私にとっては、それらを手放すことで得られる「キャッシュフローの安定」と「精神的な自由」、そして「機動力」の方がはるかに価値が高いものです。
固定費を極限までシンプルに保つ。これが、1億円の資産を単なる数字ではなく、自分と家族の自由を守るための「盾」として機能させるための、私なりの最適解です。

