スプレッドシートとNext.jsで構築する、ITエンジニアの最強資産管理システム

はじめに

投資を20年以上続けていると、溜まっていくデータの量も膨大になります。私はITエンジニアという職業柄、既存の家計簿アプリや証券会社の画面だけでは満足できず、独自の資産管理システムを自作して運用しています。

当初はGoogleスプレッドシートのみで管理していましたが、現在は「データの堅牢性」と「可視化の利便性」を両立させるため、スプレッドシート、GAS、Supabase、そしてNext.jsを組み合わせたハイブリッドな構成に進化させました。総資産1億円を達成した今、私がどのような仕組みで資産を管理しているのか、その全貌を紹介します。

システム構成:GCPとVercelを組み合わせた本格的なアーキテクチャ

単なるスプレッドシートの延長ではなく、GCP(Google Cloud Platform)やVercelといったモダンなインフラを組み合わせることで、データの自動収集と冗長性を両立させています。

1. データの自動収集(GCP Cloud Run & Supabase)

株価データや為替レートは、GCP Cloud Run上で動作するプログラムが1時間ごとに自動取得し、Supabase(PostgreSQL)に直接保存しています。また、Supabaseのデータを外部から安全に取得するためのWeb APIも、同様にCloud Runで構築しています。

2. マスターデータ管理と計算ロジック(スプレッドシート & GAS)

データの入力と「計算の核」となる部分は、あえてGoogleスプレッドシートに残しています。

  • 毎時実行:スプレッドシート側のGAS(Google Apps Script)がCloud RunのAPIを叩き、最新の市場データをシート内に取り込みます。
  • データ整形:シート内の計算ロジックによって、PL(損益)や約定データ、ダッシュボード表示用に加工されたデータを作成します。
  • 同期:加工されたデータは、GASによって再びSupabaseへ書き戻されます。

3. フロントエンド(Next.js / Vercel)

最終的な閲覧は、VercelにデプロイされたNext.jsのダッシュボードで行います。API経由でSupabaseから構造化されたデータを読み込むため、表示速度が非常に速く、外出先からスマホで資産状況を確認する際もストレスがありません。

敢えてスプレッドシートを残す「二重化」の思想

エンジニアの方なら「すべてWebアプリで完結させればいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、私はあえてスプレッドシート側にもダッシュボード機能を残し、二重化(冗長化)しています。

VercelやSupabaseといった外部サービスに障害が起きた際や、将来的にシステムのメンテナンスができなくなった場合でも、スプレッドシートさえあれば資産管理が継続できるようにするためです。シミュレーション機能を除けば、スプレッドシート側でもNext.js版と同等の可視化ができるようロジックを組んでいます。

システム開発における「フェイルセーフ(安全な停止)」の考え方を、個人の資産管理にも適用しています。

自作ダッシュボードにしかできない「3つの高度な分析」

汎用のアプリではなく、自作ツールだからこそ実現できている機能がいくつかあります。

1. ランダムウォークに基づく「50年先シミュレーション」

保有している主要3ファンド(VT、iSTOPIX、VYM)の比率に基づき、それぞれの期待リターンとリスク(標準偏差)を計算。モンテカルロ法のような考え方で、50年先までの資産推移をランダムウォーク理論に基づいてシミュレーションする機能を設けています。これにより、「最悪のシナリオで生活費が底を突かないか」をいつでも検証できます。

2. 為替の影響を排除した「真の利回り」

円安ドル高の局面では、円建ての資産額が増えて「投資の才能がある」と錯覚しがちです。私のツールでは、取得時レートと現在レートを分離し、「純粋な株価の変動」と「為替による評価増」を切り分けて表示するようにしています。

3. 目標分配金への進捗率

現在の年間分配金(税引後予測)が、目標とする生活費(月25万円×12ヶ月=300万円)に対して何%まで到達しているかをリアルタイムで表示します。総資産額という「ストック」だけでなく、配当という「フロー」の完成度を可視化することが、早期退職に向けた最大のモチベーションになっています。

まとめ:自分の資産は「自分のシステム」で守る

ITエンジニアにとって、自分の資産を管理するシステムを自作することは、単なる趣味以上の意味があります。

市販のサービスが終了しても、自分のデータとロジックが手元にあれば、一生涯の資産形成を支えるインフラになります。スプレッドシートという「普遍的なツール」と、Next.jsという「最新の技術」を組み合わせることで、柔軟性と堅牢性を兼ね備えた最強の管理体制を築くことができました。