ポートフォリオシミュレーターの使い方:目標アセット配分を数字で試す

資産形成を続けていると、「株式を多めにするか」「債券や金を少し入れるか」「現金を厚めに持つか」といった配分の悩みが何度も出てきます。

私の場合は、2026年5月に総資産1億円へ到達し、これまでのようにリターンだけを追う段階から、下落にどれだけ耐えられるかも重視する段階に入りました。そこで、目標とするアセットアロケーションを検討するために、ブログ内にポートフォリオシミュレーターを用意しています。

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この記事では、シミュレーターを作った目的、画面の各項目の見方、操作するときに気をつけたい点を整理します。投資判断を自動で決めるための画面ではなく、自分の配分案を数字とグラフで眺めるための道具として使っています。

このシミュレーターで確認したいこと

この画面で見たいのは、「将来いくらになるか」を当てることではありません。

むしろ、次のような問いを確認するために作りました。

  • 株式だけに寄せた場合、期待リターンとリスクはどの程度になるか
  • 債券や金を入れると、リスク・リターンの位置はどう変わるか
  • 毎月の支出や追加投資を入れたとき、資産推移の幅はどれぐらい広がるか
  • 悲観的なケースでも、生活費の取り崩しに耐えられそうか
  • 自分が考えている目標配分は、感覚だけでなく数字で見ても納得できるか

投資の世界では、平均リターンだけを見るとかなり楽観的に見えることがあります。ただ、実際の資産推移は一直線ではありません。大きく増える年もあれば、大きく減る年もあります。

そのブレを含めて見るために、このシミュレーターではモンテカルロ法を使っています。乱数を使って何千通りもの資産推移を計算し、その結果を楽観・中央値・悲観といった幅で表示する仕組みです。

基本パラメータの見方

最初に入力するのは、シミュレーション全体の前提です。

項目内容
初期資産額シミュレーション開始時点の資産額
月次支出額毎月取り崩す、または生活費として差し引く金額
月次追加投資毎月追加で投資する金額
シミュレーション期間何年先まで試算するか
試行回数乱数によるシミュレーションを何回行うか

初期値は、私自身が確認しやすいように「初期資産1億円」「月次支出25万円」「月次追加投資10万円」「30年」「5,000回」にしています。

ここで大事なのは、月次支出額と月次追加投資を同時に入れられる点です。たとえば、会社員として働きながら追加投資する期間を想定することもできますし、退職後に取り崩し中心で見ることもできます。

ただし、現在の画面では「途中から追加投資を止める」「何年後から取り崩しを始める」といった段階的な設定は入れていません。あくまで、同じ条件がシミュレーション期間中ずっと続く前提です。

アセット配分の見方

アセット配分では、8つの資産クラスの比率を指定します。

アセット画面上の意味
VT 全世界株式世界株式全体に近いイメージ
S&P500米国大型株中心
NASDAQ米国ハイテク株寄り
VYM 米国高配当株米国高配当株
TOPIX日本株式
Gold
米国総合債券米国債券
日本国債日本債券

各アセットは、数値入力またはスライダーで比率を変更できます。合計が100.0%になると、シミュレーション実行ボタンを押せます。100%からズレている場合は、ボタンが無効になります。

この画面は、実際に保有している銘柄を細かく登録するためのものではありません。たとえば「全世界株式を中心にしたい」「日本株を少し厚めにしたい」「債券を加えたらどうなるか」といった、目標配分の大枠を試すための画面です。

私の場合は、VT系、国内株式ETF、高配当ETF、現金を中心に資産管理しています。このシミュレーターでは、それを厳密に再現するというより、アセット配分の方向性を比較するために使っています。

リスク・リターンマップの見方

アセット配分を変えると、リスク・リターンマップにポートフォリオの位置が表示されます。

横軸はリスク、縦軸は期待リターンです。白い点が現在設定しているポートフォリオで、色付きの点が各アセット単体の位置です。

ここで見たいのは、白い点がどこに動くかです。

  • 株式比率を上げると、期待リターンもリスクも上がりやすい
  • 債券を入れると、リスクが下がる方向に動きやすい
  • 金は株式と違う動きをする前提なので、分散効果を見る材料になる
  • 相関係数の設定によって、分散効果の見え方は変わる

隣のカードには、現在のポートフォリオ全体の期待リターンとリスクが表示されます。期待リターンは各アセットの加重平均、リスクはアセット同士の相関を含めて計算しています。

初心者の方にとっては、最初から細かい数式を追うより、「配分を動かすと白い点がどう動くか」を見るだけでも十分だと考えています。

シミュレーション結果の見方

アセット配分の合計が100%になった状態で「シミュレーション実行」を押すと、資産推移予測が表示されます。

結果は、1本の未来予測ではなく、複数のパーセンタイルで表示しています。

表示見方
楽観(90%)上位寄りの結果。かなり順調だったケース
75%ライン比較的よい結果
中央値(50%)試行結果の真ん中
25%ラインやや厳しい結果
悲観(10%)下位寄りの結果。かなり厳しいケース

ここで特に見ているのは、中央値よりも悲観側です。

資産形成中は、楽観的なシナリオを見ると気分がよくなります。ただ、早期退職や取り崩しを考える段階では、悪いケースでも生活が破綻しにくいかのほうが大事になります。

たとえば、30年後の中央値が大きく増えていても、10%ラインでは途中で資産がかなり減っているかもしれません。その場合、支出を下げる、株式比率を少し落とす、追加投資を増やす、退職時期を遅らせる、といった検討余地が見えてきます。

最終年の資産予測統計

シミュレーション結果の下には、最終年の資産予測統計が表示されます。

ここでは、指定した年数が終わった時点の資産額を、悲観(10%)、25%ライン、中央値、75%ライン、楽観(90%)、平均期待資産額で確認できます。

中央値と平均は似ているようで、意味が少し違います。中央値は試行結果を順番に並べたときの真ん中です。平均はすべての結果を足して試行回数で割った値です。

資産運用のシミュレーションでは、一部の大きく増えたケースが平均を押し上げることがあります。そのため、私は平均だけでなく、中央値と悲観側のラインをセットで見るようにしています。

詳細設定で変更できること

画面下部の詳細設定では、各アセットの期待リターン、リスク、相関係数を変更できます。

初期値は、長期的な資産配分の検討に使いやすいように置いた仮定値です。将来の成績を保証するものではありません。

たとえば、次のような見方ができます。

  • 今後の株式リターンを低めに見積もったらどうなるか
  • 株式のリスクを高めに置くと、悲観シナリオはどれぐらい悪化するか
  • 株式と債券の相関が高まる前提にすると、分散効果はどれぐらい薄れるか
  • 金の期待リターンやリスクを変えると、全体の位置はどう変わるか

相関係数は、-1から1の範囲で考える値です。1に近いほど同じ方向に動きやすく、0に近いほど関係が薄く、マイナスなら逆方向に動きやすいという意味になります。

初心者の方は、最初は詳細設定を触らなくても問題ありません。慣れてきたら、「株式が思ったより伸びない場合」「債券も同時に下がる場合」など、少し厳しめの前提を試すと見えるものが増えます。

内部ロジックの概要

このシミュレーターでは、まずアセット配分からポートフォリオ全体の期待リターンとリスクを計算しています。

期待リターンは、各アセットの期待リターンに配分比率を掛けて足し合わせます。リスクは、各アセットのリスクだけでなく、アセット同士の相関係数も使って計算しています。

そのうえで、月次単位のランダムなリターンを発生させ、次の順番で資産額を更新しています。

  • 当月の運用リターンを反映する
  • 月次追加投資を加える
  • 月次支出額を差し引く
  • 資産額がマイナスになった場合は0円として扱う

この処理を、指定した年数と試行回数だけ繰り返します。最後に、各年の結果を並べて、10%、25%、50%、75%、90%のパーセンタイルを計算しています。

コードの細かい説明よりも、利用者として大切なのは「前提を入れる」「配分を変える」「悲観側も見る」という流れです。

使うときの注意点

このシミュレーターは、将来の運用成果を予測するためのものではありません。

期待リターン、リスク、相関係数はすべて仮定です。仮定を少し変えるだけで、20年後、30年後の結果は大きく変わります。特に、相場急落時には普段は分散しているように見える資産が同時に下がることもあります。

また、税金、売買コスト、為替、インフレ、年金、退職金、医療費、家族構成の変化などは、この画面だけでは十分に反映できません。現実の生活設計では、別の要素もあわせて考える必要があります。

私にとってこの画面は、正解を出すものではなく、配分案を比較するための下書き帳に近い位置づけです。

まとめ:配分の納得感を高めるための道具

ポートフォリオの検討では、期待リターンだけを見ると攻めた配分に寄りやすくなります。一方で、リスクだけを見ると守りすぎてしまうこともあります。

自作のポートフォリオシミュレーターでは、アセット配分、期待リターン、リスク、相関係数、毎月の支出や追加投資をまとめて確認できます。

私の場合は、1億円到達後の「守り」フェーズに入ったことで、中央値よりも悲観側のシナリオを重視するようになりました。目標アセットアロケーションを決める前に、複数の配分案を並べて試し、自分が納得できるリスクの範囲を確認するために使っていきます。