
年の途中で会社を退職した人や、転職したばかりの人が年末に直面するのが、「自分の年末調整はどうなるのか」「確定申告をしなければ税金を払いすぎてしまうのか」という疑問です。
年の途中で退職した場合、その年のうちに再就職したかどうかによって、年末調整の扱いが変わります。また、退職後に自分で支払った国民健康保険料や国民年金保険料などを申告すれば、社会保険料控除を受けられる場合があります。
私自身、20年以上の会社員生活の中で休職や退職、将来の早期退職(FIRE)に向けたシミュレーションを重ねてきました。会社を退職した年は、給与から天引きされた所得税と年間の正しい税額に差が生じることがあるため、年末調整や還付申告の仕組みを理解しておくことが大切です。
この記事では、退職・転職時の年末調整の対象パターン、税金が戻ってくる仕組み、そして退職後に自分で支払った社会保険料を漏れなく控除するための実務手順を解説します。
パターン別診断:退職・転職で年末調整される人・されない人
年の途中で働き方が変わった場合、年末時点の勤務状況や前職の源泉徴収票の有無によって、年末調整の扱いが異なります。
主なパターンを3つに分けて確認しましょう。
パターン1:年内に別の会社へ再就職(転職)した場合
年の途中で退職し、同じ年のうちに別の会社へ再就職した場合は、原則として新しい勤務先で年末調整を受けます。
このとき、新しい勤務先には前の会社から交付された「給与所得の源泉徴収票」を提出する必要があります。
前職で給与所得者の扶養控除等申告書を提出して給与を受け取っていた場合、新しい勤務先は前職の給与や源泉徴収税額、社会保険料などを確認し、自社の給与と合わせて年末調整を行います。
これによって、前職と現職の給与を合算した年間の所得税額が精算されます。
ただし、前職の源泉徴収票を提出できず、給与や源泉徴収税額などを確認できない場合は、原則として年末調整を行うことができません。その場合は、翌年に自分で確定申告をして税額を精算する必要があります。
パターン2:10月〜12月に転職し、前職の源泉徴収票が間に合わない場合
年末近くに転職した場合、前職の退職手続きや給与計算の関係で、新しい勤務先の年末調整の期限までに源泉徴収票が手元に届かないことがあります。
前職の給与や源泉徴収税額を確認できなければ、新しい勤務先では原則として年末調整を行えません。
その場合は、年明けに前職と現職の源泉徴収票をそろえ、自分で確定申告を行って年間の所得税額を精算します。
なお、年末調整の期限は勤務先によって異なります。転職先に前職の源泉徴収票が間に合わない可能性がある場合は、早めに担当部署へ相談しておきましょう。
パターン3:年の途中で退職し、年内に再就職しなかった場合
会社を辞めて、そのまま起業準備や休養、早期退職(FIRE)に入り、年末まで再就職しなかった場合、原則として退職した会社で年末調整を受けることはできません。
この場合、給与から源泉徴収された所得税が年間の正しい税額より多くなっている可能性があります。
そのため、翌年1月1日以降に還付申告を行うことで、納め過ぎた所得税の還付を受けられる場合があります。
ただし、必ず税金が戻ってくるわけではありません。年間の所得や源泉徴収税額、各種控除などによっては、還付が発生しないこともあります。
なぜ年の途中で退職すると税金が戻ってくることがあるのか
年の途中で退職した人が還付申告をすると、所得税が戻ってくる場合があります。
その理由は、毎月の給与から天引きされる所得税が、年間の最終的な税額そのものではなく、概算で計算されているためです。
給与から天引きされる所得税は、給与の金額や扶養親族の状況などに応じて、国税庁が定める源泉徴収税額表などを使って計算されます。
しかし、毎月の源泉徴収税額の合計と、1年間の給与収入や所得控除などを基に計算した本来の所得税額は、必ずしも一致しません。
通常は年末調整によって、その差額を精算します。
例えば、月給40万円の人が6月末で退職し、その後、年内に再就職しなかった場合を考えてみましょう。
この人の年間給与収入は、賞与などを考慮しなければ、次のようになります。
- 退職前の月給:40万円
- 勤務期間:6か月
- 年間給与収入:240万円
在職中に給与から所得税が源泉徴収されていても、退職後に給与収入がなければ、年間の給与収入は通常の1年間勤務した場合より少なくなります。
その結果、年間の所得税額を計算し直すと、すでに源泉徴収された税額の方が多くなっている場合があります。
年末まで勤務している人であれば、通常は年末調整で過不足を精算できます。しかし、年の途中で退職して再就職しなかった人は、原則として年末調整を受けられません。
そのため、源泉徴収された税額が納め過ぎになっている場合は、自分で還付申告を行うことで払い戻しを受けられます。
なお、退職後に別の所得があった場合や、源泉徴収税額が少なかった場合などは、還付されないこともあります。
転職先で源泉徴収票が間に合わなかったときの確定申告手順
秋から冬にかけて転職し、前職の源泉徴収票が間に合わなかった場合も、確定申告によって年間の所得税を精算できます。
確定申告を行う際は、基本的に次の書類を用意します。
- 前の会社から交付された給与所得の源泉徴収票
- 新しい会社から交付された給与所得の源泉徴収票
新しい会社の源泉徴収票には、年末調整が行われていないことを示す記載がある場合があります。年末調整が行われていない場合でも、源泉徴収票に記載された給与や源泉徴収税額を使って確定申告できます。
確定申告の基本的な流れ
- 前職と現職の源泉徴収票を用意する
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスする
- 給与所得の入力画面で、それぞれの源泉徴収票の内容を入力する
- 社会保険料控除や生命保険料控除など、該当する所得控除を入力する
- 計算結果を確認し、e-Taxなどで申告する
給与の支払者が複数ある場合は、源泉徴収票ごとに給与や源泉徴収税額などを入力します。
入力した内容を基に年間の所得税額が計算され、源泉徴収税額との差額が精算されます。
源泉徴収された税額が多ければ還付され、不足していれば追加で納税することになります。
なお、確定申告に必要な源泉徴収票が手元にない場合は、まず発行元の会社に確認しましょう。
退職後に支払った国民健康保険や国民年金を漏れなく控除する方法
会社を退職した後に再就職しなかった場合や、再就職までに期間が空いた場合は、社会保険料控除の申告も重要です。
在職中は健康保険料や厚生年金保険料が給与から天引きされていましたが、退職後は自分で保険料を納めるケースがあります。
主なものは次のとおりです。
- 市区町村の国民健康保険に加入して納付する保険料
- 前の会社の健康保険を任意継続して納付する保険料
- 国民年金第1号被保険者として納付する保険料
これらは、所得税の「社会保険料控除」の対象になります。
社会保険料控除は実際に支払った金額が対象
社会保険料控除では、その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った対象保険料の全額を所得から差し引くことができます。
例えば、6月末に退職して7月から国民健康保険と国民年金に加入し、年内に保険料を支払った場合、その支払額は原則としてその年の社会保険料控除の対象になります。
注意したいのは、控除の対象となるのは、その年に実際に支払った金額だという点です。
例えば、年内に翌年分の保険料を前納した場合でも、社会保険料控除の対象となることがあります。一方、年内に納期限が到来していても、実際の支払いが翌年になった場合は、原則として支払った年の控除対象になります。
また、給与から天引きされた健康保険料や厚生年金保険料は、通常、源泉徴収票の社会保険料等の金額に含まれています。確定申告では、退職後に自分で支払った分などを追加する際に、二重計上しないよう注意してください。
確定申告で追加する保険料の確認方法
退職後に自分で支払った社会保険料は、前職の源泉徴収票には記載されていません。
そのため、確定申告では、源泉徴収票に記載された社会保険料の金額に加えて、退職後に支払った保険料を確認して入力します。
主な確認方法は次のとおりです。
| 保険料の種類 | 金額の確認方法 |
|---|---|
| 国民健康保険料 | 自治体から届く納付額のお知らせ、納付済額の確認、領収証書など |
| 任意継続の健康保険料 | 保険者からの通知、納付書、領収証書、口座振替の記録など |
| 国民年金保険料 | 日本年金機構から届く社会保険料(国民年金保険料)控除証明書など |
国民年金保険料については、社会保険料控除を受ける際に、控除証明書など金額を証明する書類が必要です。
一方、国民健康保険料や任意継続の健康保険料については、支払額を正確に確認できるよう、自治体や保険者からの通知、領収証書などを保管しておきましょう。
退職後に支払った社会保険料を申告し忘れると、本来受けられる所得控除を受けられず、所得税を多く納めてしまう可能性があります。
特に退職後は、健康保険や年金の支払い方法が変わるため、年間の支払額を整理しておくことが大切です。
まとめ:中途退職したら翌年1月1日以降に還付申告を検討する
年の途中で退職した会社員は、年末調整を受けられないことがあり、給与から源泉徴収された所得税が納め過ぎになっている場合があります。
その場合は、翌年1月1日以降に還付申告を行うことで、払い過ぎた所得税の還付を受けられます。
今回のポイントを整理します。
- 年内に転職した場合は、原則として新しい勤務先で前職分を含めて年末調整を受ける
- 前職の源泉徴収票が間に合わず、給与などを確認できない場合は、原則として年末調整を行えない
- 年内に再就職しなかった中途退職者は、原則として年末調整を受けられない
- 退職後に自分で支払った国民健康保険料や国民年金保険料などは、社会保険料控除の対象になる
- 還付申告は、対象となる年の翌年1月1日から5年間提出できる
還付申告は、通常の確定申告期間である2月16日から3月15日までを待たずに提出できます。
源泉徴収票や控除に必要な情報がそろったら、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して、早めに手続きを進めましょう。
中途退職した年の税金を正しく精算するためにも、源泉徴収票と退職後の社会保険料の支払額を確認しておくことをおすすめします。
次に読むおすすめ記事




