FIRE後の健康診断はどう受ける?特定健診・がん検診で費用を抑える手順

会社員を卒業して早期退職(FIRE)を達成すると、通勤ラッシュや業務ストレスから解放され、時間の自由を手に入れることができます。しかし、退職後に多くの人がふと直面し、意外と対応に迷うのが「年1回の健康診断をどう受けるか」という問題です。

会社員時代は、労働安全衛生法に基づき、会社が定期健康診断の機会を用意し、会社負担で受診するケースが一般的でした。ところが、会社を辞めて個人になると、受診義務も会社からの日程指定もなくなります。ここで受診を怠ってしまうと、生活習慣病の兆候や、検診の対象となる病気の発見機会を逃すことにつながります。一方で、不安だからと民間の人間ドックを全額自己負担で受けると、医療機関や検査コースによって数万円から10万円以上の出費になり、生活費の年間計画を圧迫してしまいます。

退職後の健康診断は、加入する公的医療保険によって窓口や利用できる健診制度が大きく異なります。なお、一般に健康管理の検査には、生活習慣病の予防・早期発見を主目的とする「健診(特定健診等)」と、特定のがんの早期発見を目的とする「がん検診」があり、公的制度では窓口や体系が分かれています。まずは要点となる結論と全体像を確認しておくとスムーズです。

この記事の結論

FIRE後の健康診断は、まず自分が加入している健康保険の制度を確認することが基本になります。

  • 国民健康保険:お住まいの市区町村で「特定健診」と「自治体がん検診」の対象・受診方法を確認する
  • 協会けんぽ任意継続:被保険者本人向けの生活習慣病予防健診(自己負担上限最高5,500円)や人間ドック補助(補助上限最高25,000円)の対象条件・利用可否を確認する
  • 健康保険組合の任意継続:加入していた組合独自の任意継続者向け健診メニューや補助額、申込期限を確認する
  • 家族の被扶養者:家族が加入する健康保険から届く被扶養者向け特定健診の案内を確認する

公的健診で受けられる検査を把握したうえで、不足する専門検査だけを必要に応じて自費で追加するのが、費用と検査内容を無理なく両立させる実践的な方法です。

退職後の加入保険主な窓口主な健診制度最初に確認すべきこと
国民健康保険お住まいの市区町村(国保・健康担当課)特定健康診査・自治体がん検診受診券の送付方法、対象要件、申込時期
協会けんぽ任意継続協会けんぽ都道府県支部生活習慣病予防健診・人間ドック補助任意継続者の対象条件、契約健診機関、費用
健康保険組合の任意継続加入中の健康保険組合組合独自の健診・人間ドック補助任意継続者の対象範囲、補助額、申込期限
家族の健康保険の被扶養者家族が加入する健康保険組合など被扶養者向け特定健診受診券の送付、契約医療機関、受診方式

自治体の公的制度や加入保険の補助を賢く確認して組み合わせることで、費用負担を抑えながら必要に応じた健診体制を整えることが可能です。この記事では、退職後に直面する健診の課題、各保険ルートの実情、そして自治体健診を活用して費用を抑える具体的な手順と注意点を解説します。

退職後に直面する健康診断の「2つの罠」

会社員からFIRE生活へ移行した直後は、健康管理に関して陥りやすい2つの典型的な罠があります。

罠1:受診義務が消滅して「検診空白」に陥るリスク

会社員の場合、労働安全衛生法第66条により、事業者には労働者への健康診断実施義務があり、労働者側にも原則として受診義務があります。人事部や総務部から日程が指定され、業務時間中や指定医療機関で半ば自動的に受診する仕組みが整っています。

しかし、退職して個人になると、法的な受診義務はなくなります。市区町村や保険者から案内が届く場合でも、受診するかどうかは個人の判断に委ねられます。自分で医療機関を探して予約し、スケジュールを確保しなければ受診機会を失ってしまうため、面倒になって受診を先延ばしにしがちです。自覚症状がない初期の高血圧、脂質異常、糖尿病などの兆候を放置してしまう状態(ここでは便宜上、健診を受けない期間が続く状態を「検診空白」と呼びます)は、早期退職者が最も避けたいリスクのひとつです。

罠2:不安から全額自費の高額人間ドックを毎年受けてしまうリスク

検診空白のリスクを警戒するあまり、民間の人間ドックを毎年フルコースで予約してしまうケースもあります。

民間医療機関の日帰り人間ドックは、身体計測、血液検査、胸部X線、胃部検査、超音波検査などがパッケージ化されており、公的健診でカバーされない検査をまとめて受けられる大きなメリットがあります。年齢や既往歴、家族歴などから専門的な追加検査が必要と考えられる場合には有力な選択肢です。

一方で、日帰り人間ドックの費用は数万円程度から設定されており、脳MRIや胸部CTなどの専門オプションを追加すると10万円を超える場合もあります。年間生活費を月25万円(年300万円)程度でコントロールしている場合、目的を整理せずに高額な検査を毎年漫然と自費で受けるのは小さくない固定費負担です。公的健診でカバーできる範囲と、自費で追加すべき検査を合理的に使い分ける視点が大切になります。

退職後の健康保険別:健診ルートの全体マップ

退職後の健診ルートは、実務上、次の4つのケースに分けて考えると分かりやすくなります。特に任意継続は、協会けんぽと健康保険組合で健診制度や補助内容が異なるため、分けて確認する必要があります。

ケース1:国民健康保険(国保)加入者の場合

退職後に市区町村の国民健康保険に加入した場合、健診の実施主体はお住まいの市区町村(国保保険者)になります。

実施年度中に40歳から74歳となる国保加入者は、原則として「特定健康診査(特定健診)」の対象になります。受診費用は自治体によって異なり、無料の自治体もあれば、数百円から1,000円程度の自己負担が設定されている自治体もあります。

ここで実務上注意したいのは、受診券や案内の送付方法・時期は自治体によって異なるという点です。対象者へ一斉に自動郵送される自治体もあれば、申込みや問い合わせが必要な自治体もあります。

また、年度の途中で退職して国保へ加入した場合は特に注意が必要です。自治体によっては、年度当初(4月1日時点など)の加入者を基準に受診券を一斉発送しているため、年度途中に加入した人には自動的に届かない場合があります。一方、途中加入者へも一定期間後に送付する自治体や、窓口や電話での申込みによって発行する自治体もあります。

退職後に国保へ加入した場合は、「受診券が勝手に届く」と思い込まず、お住まいの自治体の国保担当課や公式ウェブサイトで、対象要件、受診券の発送スケジュール、申込方法を確認することが大切です。前職の健康保険でその年度内にすでに特定健診等を受けている場合は重複受診ができないこともあるため、その点も併せて確認してください。

なお、40歳未満の方については国の特定健診制度の対象外となります。自治体によっては独自に「若年者健診」「30歳代健診」などを実施している場合があるため、自治体の広報やウェブサイトで実施の有無や条件を確認するとよいでしょう。

退職前の健康保険(協会けんぽや企業の健康保険組合)を最長2年間継続する任意継続を選ぶ場合、退職後の健康保険の選択(任意継続と国民健康保険のどちらが得か)については、保険料や扶養条件を詳細に試算・比較した健康保険の任意継続メリットとデメリット:国保・扶養との損得判定表を参考にしてください。

健康保険の任意継続メリットとデメリット:国保・扶養との損得判定表
会社を退職すると、健康保険は自分で選ぶ必要があります。選択肢は「退職前の健康保険を任意継続する」「国民健康保険に入る」だけではありません。条件を満たせば、配偶者や家族の健康保険の被扶養者になる選択肢もあります。特に早期退職を考える場合、退職…

ケース2:協会けんぽの任意継続を利用している場合

協会けんぽでは、被保険者本人向けに生活習慣病予防健診や人間ドック補助が用意されています。任意継続被保険者についても対象に含まれる場合がありますが、在職中と同じ健診制度をそのまま利用できるとは限りません(※被扶養者であるご家族は特定健診の対象となります)。

任意継続被保険者が利用できる健診メニュー、契約健診機関、補助条件、申込方法は、管轄の協会けんぽ支部または予約先の健診機関に事前確認したうえで予約してください。

受診手順は、会社員時代のように勤務先が日程を一括設定するのではなく、協会けんぽの契約健診機関一覧から自分で医療機関を選び、直接電話等で予約する方式が基本です。予約時には「協会けんぽの任意継続被保険者向け健診を利用したい」と伝え、マイナ保険証や資格確認書などの資格情報(記号・番号など)について健診機関の案内に従います。協会けんぽへの事前書類提出は通常不要で、多くの場合健診機関へ直接予約しますが、健診機関の案内に従って手続きを行ってください。

2026年度(令和8年度)からは、協会けんぽにおいて被保険者向けの健診制度が拡充され、人間ドック補助も開始されています。

  • 35歳以上の被保険者本人を対象とする生活習慣病予防健診(一般健診)について、自己負担額の上限は最高5,500円です(実際の自己負担額は受診する健診機関や検査内容によって異なります)。一般健診には、診察、血圧、血液検査、尿検査、胸部X線、胃部X線検査、便潜血検査などがパッケージとして含まれています。
  • 2026年度からは、35歳以上の被保険者を対象に、協会けんぽが指定する人間ドック健診実施機関で受診した場合、最高25,000円を上限とする定額補助を受けられます。補助は定額の上限であり、健診費用が25,000円になるわけではありません。実際の自己負担額は、健診機関が設定する料金から補助額を差し引いた金額です。
  • なお、生活習慣病予防健診(一般健診)と人間ドック補助は同一年度に併用できず、原則として年度内1人1回、いずれか一方を利用する仕組みです。最新の利用条件は、協会けんぽの公式案内で確認してください。

実務上の注意点として、受診日時点で任意継続被保険者の資格を維持している必要があります。途中で資格を喪失した後に受診した場合は全額自己負担となるため注意が必要です。案内の送付時期や案内方法は支部や年度によって異なるため、任意継続の資格取得後に管轄支部の健診案内ページ等で確認してください。

ケース3:健康保険組合(組合健保)の任意継続を利用している場合

大企業やIT系企業などで独自の健康保険組合に加入していた場合、任意継続によって健康保険の資格を維持できても、健康診断の対象範囲や補助内容まで在職中と同じとは限りません。

組合健保によっては、以下のように運用が分かれます。

  • 任意継続被保険者本人も在職者と同等の健診・人間ドック補助が受けられる組合
  • 一般健診は補助対象だが人間ドック補助は対象外となる組合
  • 補助額や自己負担割合が在職者と異なる組合
  • 提携の契約健診機関や直営健診センターでの受診に限定される組合

在職中は自社のオフィスフロアや会議室に健診機関が来て受診していた方でも、退職後は在職者向けの社内集団健診の対象外となることが一般的です。その場合は、健保組合が用意する契約健診機関や直営センターで個別に受診する形になるケースが多く見られます。ただし、任意継続者向けの別制度や組合独自の案内がある場合もあるため、事前に健保組合へ確認してください。

申込方法も、健保組合のWebポータルから受診券発行を申請するケース、専用の健診代行システムを経由するケースなど組合ごとに異なります。退職前に健保組合の公式サイトや窓口で「任意継続者が利用できる健診メニュー」「補助額」「申込方法や期限」をあらかじめ確認しておくことを強くおすすめします。

ケース4:家族の健康保険の被扶養者になっている場合

配偶者などの健康保険の被扶養者になっている場合、扶養者側の健康保険(健保組合や協会けんぽ等)から40歳以上の被扶養者向けに特定健診の受診券や受診案内が交付・送付されることがあります(送付方法や申請の要否は保険者により異なります)。

健保組合によって、契約医療機関での個別受診、集合健診会場での巡回受診、または自治体の健診受診後に領収書を提出して補助を受ける形態などがあります。費用は無料または少額負担で受診できる場合が多いです。

自治体インフラをフル活用!費用を抑える健診の組み合わせ方

国民健康保険に加入している場合、民間の高額ドックを全額自費で利用する前に、自治体の公的インフラを賢く組み合わせることで、費用負担を抑えながら必要な検査を受けることができます。

目標は「必ず年間1万円以内にすること」ではなく、「自治体の制度で無料・低額になる検査を確認し、不足する検査だけを必要に応じて追加すること」です。

ステップ1:土台となる「特定健診」で生活習慣病の兆候を確認する

すべての基本となるのが、自治体(国保)が実施する特定健康診査(特定健診)です。

対象は実施年度中に40歳から74歳となる方で、メタボリックシンドロームの予防・改善に着目した検査項目が設定されています。

主な検査項目:

  • 質問票(服薬歴、喫煙習慣、運動習慣など)
  • 身体計測(身長、体重、BMI、腹囲)
  • 血圧測定
  • 血液検査(脂質代謝、血糖代謝、肝機能など)
  • 尿検査(尿糖、尿蛋白)
  • 一定の基準に該当した場合などに、医師の判断を踏まえて実施される詳細項目(心電図、眼底検査、貧血検査など。実施条件は制度上定められています)

※腎機能に関する検査項目や実施方法は、特定健診の項目表や自治体・保険者の案内によって確認してください。 ※特定健診は主に生活習慣病リスクの把握を目的とした基礎的なスクリーニングであり、あらゆる病気を網羅する総合的な健康診断ではない点に留意が必要です。

受診費用は自治体によって異なり、無料の自治体もあれば、数百円から1,000円程度の自己負担が設定されている自治体もあります。民間クリニックでこれと同等の血液検査や診察を全額自費で受けると初診料を含めて数千円から1万円弱かかる場合があるため、特定健診を活用すること自体が基礎的な負担軽減になります。

なお、健康診断やがん検診は、主に自覚症状のない人を対象としたスクリーニングです。すでに胸の痛み、強い倦怠感、急激な体重減少、血便や腹痛などの症状がある場合は、健診の時期を待つのではなく、通常の保険診療として速やかに医療機関を受診してください。

ステップ2:主ながん検診を必要に応じて組み合わせる

国保の特定健診は主に生活習慣病リスクの把握を目的とした制度であり、主要ながんの検査は含まれていません(※協会けんぽの一般健診には胃・大腸・肺の検査が含まれていますが、国保では別体系となっています)。そこで、自治体が実施している「がん検診」を必要に応じて組み合わせます。

厚生労働省の指針に基づく主ながん検診は、以下の5種類です。市区町村が実施するがん検診では、国の指針を踏まえた制度が設けられていますが、実施する検診の種類、対象年齢、受診間隔、受診方法、自己負担額は自治体によって異なります。以下は制度のイメージをつかむための参考値であり、実際の料金やお住まいの地域で実施されている検診の種類は、自治体の公式案内で確認してください。

主ながん検診の概要と費用イメージ(一例):

  • 胃がん検診:原則50歳以上、2年に1回。問診に加え、胃内視鏡検査(胃カメラ)または胃部X線検査(バリウム)を実施します。なお、国の指針では、当分の間、胃部X線検査については40歳以上・年1回で実施することも認められています。実際の対象年齢・受診間隔・自己負担額は自治体により異なり、費用は無料から数千円程度まで幅があります。
  • 大腸がん検診:40歳以上、年1回。問診と便潜血検査(2日法)。自己負担額は自治体により異なり、無料から数百円〜1,000円程度が目安です。
  • 肺がん検診:40歳以上、年1回。問診と胸部X線検査。原則として50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)600以上など、国の指針で定められた高リスク条件に該当する場合は喀痰細胞診が追加されます。自己負担額は自治体により異なり、無料から数百円〜1,000円程度(喀痰細胞診の有無等で異なる)が目安です。
  • 乳がん検診(女性対象):40歳以上、2年に1回。マンモグラフィ(乳房X線検査)。自己負担額は自治体により異なり、無料から数千円程度(無料クーポンの配布年度や自治体により異なる)が目安です。
  • 子宮頸がん検診(女性対象):20歳以上、2年に1回。頸部細胞診。自己負担額は自治体により異なり、無料から数千円程度(無料クーポンの配布年度や自治体により異なる)が目安です。

なお、前立腺がん検診(PSA検査)は国の指針による5大がん検診には含まれませんが、自治体独自の事業として50歳以上の男性向けなどに無料〜1,000円程度で実施されている場合があります。

民間クリニックで胃内視鏡検査を全額自費で受ける場合、検査内容や鎮静の有無などによって、1万円台から2万円程度、またはそれ以上になることがあります。一方、自治体の検診制度を利用できれば、大幅に抑えられた自己負担で受診できる地域があります。

推奨される対象年齢・方法・間隔で行うがん検診には、早期発見を通じて対象となるがんの死亡率を減らすことが期待される一方で、異常がないのに要精密検査となる「偽陽性」、病変が見逃される「偽陰性」、命に影響しないがんを発見してしまう「過剰診断」などの不利益(デメリット)も伴います。また、検診で異常が疑われた(要精密検査となった)場合は、自治体の検診枠ではなく、通常の保険診療として医療機関で精密検査を受けることになり、別途検査費用が発生します。これらの特徴を理解したうえで、自治体や医療機関の案内に沿って受診を判断することが大切です。

ステップ3:歯科の定期チェックと口腔ケア

全身の健康管理において口腔内のケアも欠かせません。歯周病は糖尿病や心血管疾患などとの関連が研究されており、歯の健康を保つことは日々の食生活や将来の健康寿命の維持という面でも大切です。

歯科のチェックには主に以下の方法があります。

  1. 自治体の成人歯科健診(歯周病検診):節目年齢などを対象に実施される制度があり、指定歯科医院で無料または数百円程度で受診できる場合があります。対象年齢・実施時期・自己負担額は自治体によって異なります。
  2. 歯科クリニックでの受診:歯周病などの疾患に対する検査・治療・管理として歯石除去などを行う場合は、健康保険が適用されることがあります。一方、単なる予防目的や審美目的のクリーニングは自由診療(全額自己負担)になる場合があるため、予約時に保険適用の範囲や費用を確認することが重要です。保険診療で行われる一般的な検査や歯石除去でも、処置内容に応じて数千円程度の自己負担になることがあります。

健診・検診ごとの受診費用イメージ(一例)

民間の日帰り人間ドックと、自治体の公的制度を活用した場合における受診時の費用イメージの一例を比較します。

検査区分民間日帰り人間ドックの一例(自費)自治体制度を活用した場合の一例
基本健診(身体・血圧・血液・尿)基本料金に含まれる特定健診:無料〜1,000円程度(年1回)
胃の検査基本料金に含まれる(バリウム等)自治体胃がん検診:無料〜数千円程度(原則2年に1回・受診年度の費用)
大腸の検査基本料金に含まれる(便潜血)自治体大腸がん検診:無料〜数百円から1,000円程度(年1回)
胸部レントゲン基本料金に含まれる(胸部X線)自治体肺がん検診:無料〜数百円から1,000円程度(年1回)
口腔ケア(※別体系)通常は含まれない(別途受診)節目歯科健診(自治体の対象者のみ)または症状・診断に応じた保険診療

※受診年度の自己負担総額は、年齢、対象となる公的制度、受診する検査項目、自治体によって異なります。複数の公的制度を組み合わせることで、自己負担を数千円程度に抑えられる場合もありますが、すべての検査を毎年一定額で受診できることを保証するものではありません。 ※胃がん検診や乳がん・子宮頸がん検診、成人歯科健診などは、対象年齢や受診間隔(2年に1回など)が設定されており、毎年の費用が一定ではありません。上表は、年1回の検査と複数年に1回の検査を並列した「各検査ごとの受診費用イメージ」です。 ※歯科検診や口腔ケアは特定健診・がん検診とは別枠の制度です。

また、自治体の健診でカバーできるのは一定の基本項目と推奨される一部のがん検診に限られます。脳疾患、心臓の詳細検査、腹部超音波、その他専門的な検査を希望する場合は、年齢や自覚症状、既往歴、家族歴などを踏まえて医師と相談し、目的を明確にしたうえで人間ドックや専門ドックの自費受診を検討するとよいでしょう。

年齢による違いと受診時の留意事項

自治体の健診インフラを活用する上で、知っておくべき年齢区分や当日の注意点があります。

30代でFIREした場合の健診選択肢

特定健康診査や多くのがん検診は、発症リスクが高まる「40歳以上」を対象に設計されています。そのため、30代で早期退職した場合は、自治体からの定期的な受診券送付がないケースが一般的です。

30代で退職した方の選択肢としては、以下が考えられます。

  • 自治体の若年者健診を確認する:自治体によっては、18〜39歳の国保加入者を対象に「若年者健康診査」「30歳代健診」を無料または低額で実施している場合があります。
  • 一般の定期健康診断コースを自費受診する:クリニック等で実施されている労働安全衛生法準拠の定期健診(法定項目セット)を自費で申し込みます。費用は医療機関や検査項目によって異なりますが、8,000円〜12,000円前後の料金設定が見られることもあります。受診前に各医療機関の料金表を確認してください。
  • 任意継続期間の健診を活用する:退職後最長2年間は任意継続を選び、保険者が提供する被保険者向け健診を活用するのも現実的な選択肢です。ただし、協会けんぽの生活習慣病予防健診(一般健診)や人間ドック補助は「35歳以上」が対象です(30歳など節目年齢の若年健診を除く31〜34歳は対象外)。加入している健康保険組合や協会けんぽの対象年齢や受診条件を必ず事前に確認してください。

胃内視鏡検査での追加処置に関する留意点

自治体の胃がん内視鏡検診を受診する際、事前に知っておくべき実務上の注意点があります。

内視鏡検査中に病変が見つかり、医師の判断で生検や病理検査などが行われる場合、検診料金とは別に、保険診療として自己負担が発生することがあります。

取り扱いや追加費用は、医療機関や行われた処置内容によって異なります。

そのため、検診当日は受診券や問診票だけでなく、マイナ保険証または資格確認書など、医療機関が案内する資格確認書類を持参するようにしてください。

運営者の視点:健康は最も利回りの高い「コア資産」

ITエンジニアとして20年以上投資を続け、総資産1億円を達成した現在、私が最も重視している資産は「健康」そのものです。

人的資本の維持とヘルスケア防衛

資産形成の初期段階では、人的資本(働いて給料を稼ぐ力)を最大化し、それをインデックスETFや高配当ETFなどの金融資産に変換していく作業が中心でした。しかし、早期退職を視野に入れた「守り」のフェーズに入ると、健康は「予期せぬ支出を防ぎ、生活の自由を維持するための防衛壁」になります。

生活習慣病が進行して慢性疾患になったり、重大な病気の発見が遅れて長期の治療が必要になったりすると、公的な高額療養費制度があるとはいえ、医療費以外の自己負担や通院・療養に伴う生活面への影響まで完全になくなるわけではありません。何より、時間と自由を楽しむために目指したFIRE生活の質そのものが損なわれてしまいます。

過度な高額ドックを盲目的に受け続ける必要はありませんが、公的制度を使いながら自分の身体の状態を定期的に把握し続けることは、長期投資におけるリスク管理と同じくらい不可欠な取り組みだと考えています。

受診ルーティンを仕組み化する

退職後の健康管理で最も大切なのは、費用の多寡よりも「受診の仕組み化」です。会社員のように誰からも日程を指定されない環境では、自分でスケジュール管理を行う必要があります。

私の場合は、以下のような手順でルーティン化を心がけています。

  1. 自治体や保険者の案内時期を把握する:お住まいの地域や加入保険で健診の案内が届く時期(春〜初夏など)を確認しておきます。
  2. 案内が届いたら早めに予約する:案内を確認したら後回しにせず、指定医療機関のウェブ予約等で受診日を押さえます。年度末(冬〜春)は予約が混み合いやすいためです。
  3. 歯科の次回予約をその場で確定する:歯科での受診終了時に、3〜6か月後の次回チェック日をその場で予約し、カレンダーに登録しておきます。

ITシステムの定期メンテナンスと同じように、身体のチェックも年に一度の定時処理として年間スケジュールに組み込んでしまうのが、無理なく継続する一番のコツだと感じています。

まとめ:制度を冷静に確認して健康と資産を守る

早期退職後の健康診断は、「高額な民間ドックを毎年受ける」か「面倒だから何もしない」かの二者択一ではありません。

  • 国民健康保険の「特定健康診査」を土台にして、血圧・血液・尿などの基礎データを低額または無料で把握する。
  • 自治体のがん検診で対象となっているがんについて、定められた方法・間隔でスクリーニングを受ける。
  • 任意継続を利用している期間は、加入保険者(協会けんぽや健保組合)の被保険者向け健診制度や補助内容を退職前に確認し、活用できるメニューを把握しておく。
  • 歯科での定期的なチェックや適切な口腔管理を習慣にする。
  • 健診・がん検診は自覚症状がない人を対象としたスクリーニングであり、すでに症状がある場合は健診を待たず速やかに通常の保険診療として医療機関を受診する。

公的制度や保険者の規約を丁寧に調べれば、無理のない費用負担で現実的なヘルスケア防衛が可能です。自分自身の身体という最大の資本を大切にメンテナンスしながら、安心できるFIRE生活を送っていきたいものです。

次に読むおすすめ記事

生活費25万円で考える早期退職ライン
はじめに早期退職(FIRE)を考える上で、最も重要な指標は「毎月の生活費」です。資産がいくらあっても、生活費が高ければ永遠にゴールには到達できません。今回は、私の現在の基本生活費である「月25万円」を基準に、どれくらいの資産があれば早期退職…
生活防衛資金をいくら積んでいるか:1億円達成後も変えていない私のルール
「生活防衛資金はいくら必要か」は、資産形成を考える上でよく出てくる問いです。一般的な目安は「生活費の6か月〜2年分」と言われていますが、この幅は広すぎてあまり参考になりません。私が実際にどう管理しているか、現在の数字も含めて書きます。現在の…
健康保険の任意継続メリットとデメリット:国保・扶養との損得判定表
会社を退職すると、健康保険は自分で選ぶ必要があります。選択肢は「退職前の健康保険を任意継続する」「国民健康保険に入る」だけではありません。条件を満たせば、配偶者や家族の健康保険の被扶養者になる選択肢もあります。特に早期退職を考える場合、退職…

参考情報