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1億円あっても車と家を持たない理由:自由と災害リスクヘッジの両立

はじめに

総資産が1億円を超えると、周囲からは「いい車に乗らないのか」「そろそろマイホームを買ったらどうだ」と言われる機会が増えます。確かに、どちらもキャッシュで即座に一括購入できるだけの資金は手元にあります。

しかし、私はあえて車も持ち家も持たないという選択を貫いています。これは単なる節約志向や合理性の追求だけではありません。資産形成の出口戦略(FIRE)を見据えるとともに、近年特に痛感している「頻発する自然災害に対する生活防衛と、心の平穏の確保」を見据えた戦略的な判断です。

世間一般では、マイホームや自家用車を持つことが「安心や豊かさの象徴」と捉えられがちです。しかし、地震や豪雨などの自然災害が頻発する日本において、高額な固定資産を特定の1地点や屋外に抱え込むことは、有事に人生そのものを縛り付け、計り知れない経済的・精神的ダメージを負う巨大なリスクになり得ます。

災害時に家や車を失うことの本当の過酷さと、それらを持たないことで日々の生活から災害に対する不安がどれほど劇的に軽減されるのか。私が「持たない生活」にこだわる理由を詳しく整理します。

なぜ車を持たないのか

1億円という資産を築く過程において、高級車を所有するステータスに惹かれる時期が全くなかったわけではありません。しかし、維持コスト、事故リスク、そして何より「災害時の脆弱性と精神的負担」を冷静に天秤にかけた結果、自家用車の所有はデメリットが圧倒的に大きいという結論に至りました。

維持コストと代替手段の比較

燃料費、自動車税、任意保険料、月極駐車場代、そして定期的な車検や点検費用。これらを合算すると、自家用車を1台維持するだけで年間数十万円から100万円以上の固定費が確実に消えていきます。

交通網が発達した都市部で生活する私にとっては、必要なときにタクシーやカーシェアリング、レンタカーを利用する方が圧倒的に経済的です。仕事で疲れた日や悪天候の日に迷わずタクシーを使ったとしても、年間の利用総額は自家用車の維持費の足元にも及びません。

交通事故という最大のリスクを排除する

金銭的なコスト以上に重視しているのが、交通事故の加害者になるリスクの排除です。どれほど慎重に安全運転を心がけていても、相手の飛び出しや悪天候、予期せぬトラブルなど、事故の可能性を完全にゼロにすることはできません。

万が一、人身事故を起こしてしまった場合、多額の損害賠償リスクだけでなく、長年積み上げてきたキャリアや社会的な信用を一瞬で失うことになります。運転そのものが人生の生きがいという強いこだわりがない限り、自らこの巨大なリスクを抱え込む必要はないと考えています。

災害時の脆弱性と「台風のたびにソワソワしない安心感」

近年、線状降水帯による集中豪雨や河川の氾濫、高潮、内水氾濫などで、道路や駐車場が冠水する被害が毎年のように全国で発生しています。

ニュースで頻繁に目にするのが、自宅や月極駐車場に止めてあった車が浸水し、そのまま廃車(全損)になってしまう光景です。大雨の中で無理に車を動かし、アンダーパスなどで立ち往生し水没する事例もあります。自然災害の前では、数百万円から一千万円を投じた愛車であっても、わずか数十分で無価値な鉄くずと化してしまいます。

自家用車を所有している人は、台風や大雨の予報が出るたびに「近くの川が溢れて駐車場が浸水しないか」「屋外に止めてある車に飛来物が当たらないか」「車を高台へ移動させた方がいいのではないか」と、常に強い不安やストレスに晒されます。

車を所有せず、日常の移動を電車や徒歩、タクシーで完結させ、必要な時だけカーシェアを利用するスタイルであれば、豪雨の予報が出た時点で単に外出を控えるだけで済みます。どれほど地域一帯が冠水しようとも、屋外に置いてある自分の固定資産が水没して数百万円を失うリスクは完全にゼロです。

屋外に高額な動産を置かないことで、「台風や豪雨のたびに愛車の心配をしなくて済む」という精神的な平穏は、想像以上に大きなメリットだと実感しています。

なぜ持ち家を持たないのか(災害リスク観点)

賃貸暮らしの「住み替えやすさ」や「住宅ローンを背負わない身軽さ」という一般的な利点に加え、私は「メンテナンス性の外注化」「資産の流動性」、そして何より「被災時の固定化リスクの回避」という観点から、持ち家は極めてリスクの高い選択肢だと判断しています。

管理コストの完全な外注化

ITエンジニアの視点で考えると、システム開発において自社で物理サーバーを抱え込まず、クラウドサービスを利用して保守・運用を専門業者に任せるのと同様に、住居の維持管理も管理会社やオーナーへ完全に外注するのが最も合理的です。

給湯器の故障、水回りのトラブル、経年劣化による外壁や屋根の修繕などが発生しても、賃貸であれば管理会社に連絡するだけで、費用負担も業者の手配もほぼ外注化できます。自分自身の貴重な時間と労力を建物の維持修繕に奪われないことは、日々の生活の質を高く保つ上で欠かせません。

資産の流動性と相続への配慮

不動産は株式や投資信託、現預金といったペーパーアセットに比べ、現金化するまでに数ヶ月から年単位の時間がかかります。流動性が極めて低い資産です。

また、私が独身で母を扶養している立場上、万が一の際に残された家族が不動産の売却処分や名義変更、固定資産税の支払いで苦労することは避けたいと考えています。相続において最も公平で分割しやすく、手続きが簡潔なのは現金や上場株式です。家族に管理の手間や相続トラブルを残さないという点でも、資産をペーパーアセットに集中させるメリットは大きいです。

アセットアロケーションの歪みを防ぐ

世界全体の投資可能な資産を時価総額比率で構成した「グローバル市場ポートフォリオ(GMP)」のデータを見ると、株式が約50%、債券が約45%であるのに対し、不動産の割合はわずか5%程度に過ぎません。

私の1億円のポートフォリオにおいて、数千万円という巨額の資金を「特定の1地点にある1軒の建物と土地」に集中投資することは、分散投資の基本原則から著しく外れます。不動産への投資比率は全体の数パーセント程度に抑えるのが適正であり、持ち家を1軒買うことは、ポートフォリオの健全なバランスを根本から歪めてしまうことを意味します。

災害時の巨大な固定化リスク:被災時の絶望・二重ローン・復旧地獄

持ち家を避ける最大の決定打となっているのが、地震や水害などの自然災害に直面した際の「固定化リスクと復旧の過酷さ」です。世間の多くの人は、家を失うことの本当の恐ろしさを十分に理解していないように感じます。

床上浸水・半壊時の途方もない復旧負荷

自宅が床上浸水や半壊の被害に遭った場合、仮に火災保険や水災補償が下りたとしても、その後の復旧の道のりは過酷を極めます。

  • 室内に流入した汚泥の掻き出し
  • 濡れて使い物にならなくなった家具や家電の運び出しと廃棄
  • 床下の泥出しと消毒乾燥
  • 複数の工事業者の手配、見積もり合わせ
  • 保険会社との交渉など、膨大で重労働なタスクのすべてを所有者自身が陣頭指揮を執って進めなければなりません。

大規模災害の直後は、どの工務店やリフォーム業者も数ヶ月から1年以上待ちの状態になり、いつ元の生活に戻れるかも分からないまま、心身ともに疲弊していくことになります。

これが賃貸であれば、被害の程度にかかわらず退去手続きを取り、敷金等の精算をして別の安全な賃貸物件やホテルへ即座に引っ越すだけで完結します。建物の復旧作業や修繕の重圧を一切背負う必要がありません。

保険の限界と住宅ローンの「二重苦」

  • 持ち家が全壊や大規模半壊した場合、巨額の修復費用が必要になるが保険金だけでは全額カバーできない。
  • 火災保険の水災補償は条件が厳しく、地震保険は火災保険金額の最大50%までしか支払われないため、再建が困難になる。
  • 住宅ローンは災害で住めなくても返済義務が残り、被災した不動産のローンと仮住まいの家賃・再建費用を同時に支払う「二重ローン・二重債務」のリスクが生じる。

家が無事でも「生活基盤の壊滅」で住めなくなる現実

自宅の建物自体は頑丈で耐震性に優れ、無傷で耐えたとしても、安心はできません。周辺一帯のスーパー、コンビニ、ドラッグストア、病院、道路が壊滅し、上下水道や電気の復旧に数ヶ月かかるような事態は十分にあり得ます。

生活インフラが麻痺してしまえば、家が無傷であっても実質的にそこに住み続けることは困難です。持ち家の場合、「住めないのに固定資産税やローンの支払いは続き、簡単には他所へ移住できない」という八方塞がりの状態に陥ります。

活断層直上・液状化判明による「負動産化」

大地震の後に「実は自宅の敷地が活断層の真上だった」「地盤が弱く液状化が起きやすい土地だった」という事実が広く知れ渡った場合、その土地の資産価値は一気に暴落します。

危険を感じて別の安全な地域へ引っ越そうとしても、買い手がつかず、売りたくても売れない「負動産」として資産が塩漬けになってしまいます。

賃貸だからこそ得られる「災害時の圧倒的な心の平穏」

持ち家を所有していると、「巨大地震が来たら家が壊れるのではないか」「近くの川が氾濫して床上浸水したらどうしよう」「ローンが残っているのに被災したら破産してしまう」といった、自然災害に対する根源的な恐怖や不安が常に頭の片隅に残り続けます。

一方、賃貸暮らしであれば、そうした精神的重圧から根本的に解放されます。

万が一、大地震や水害で住んでいる建物が被災しても、建物の修繕費用や復旧の責任はすべてオーナーや管理会社が負います。自分自身が背負う金銭的リスクは家財保険の範囲でカバーされる私物程度に限られ、住居に関しては退去して安全な別の場所へ移動するだけで済みます。

「災害が起きても、自分や家族の命さえ守れれば、住まいや資産の面で人生が詰むことはない」という確信があるため、日頃から災害に対する過度な不安を感じることなく、心穏やかに過ごすことができます。

「持たない」からこそ実現できる災害時のフェイルオーバー戦略

家や車という高額な固定資産にお金を投じず、資産を株式などのペーパーアセットと生活防衛資金(現預金)という流動性の高い形で保持しているからこそ、有事の際に圧倒的な機動力を発揮できます。

生活防衛資金で「心身の健康と選択肢をお金で買う」

私は20年以上投資を続け、総資産1億円に到達した現在も、生活費数年分の現預金を「生活防衛資金」として常に確保しています。

生活防衛資金を持つ目的は、株式市場の暴落時に資産を投げ売りしないためだけではありません。災害などの有事において、「過酷な避難生活を避け、心身の健康と安全をお金で買うため」でもあります。

もし自宅周辺が被災したり長期の断水・停電に見舞われた場合、無理に地元の過酷な指定避難所(体育館など)に留まる必要はありません。手元の生活防衛資金を活用して、被災地域外のビジネスホテルを予約して避難(ホテル避難)したり、県外へ一時避難するという選択肢を即座に取ることができます。

プライバシーが確保された個室空間で温かいシャワーを浴び、清潔なトイレと寝床、電源とWi-Fiを確保することで、高齢の家族の健康を守り、リモートワークや行政手続きを普段通り継続することが可能になります。

身一つで安全な場所へ移住できる究極の身軽さ

被災地域の復旧が長期化しそうであれば、ホテル滞在中に落ち着いて次の引っ越し先を探し、安全なエリアの賃貸物件へ身一つで生活拠点を移転(フェイルオーバー)できます。

土地や建物、自家用車に人生を縛り付けられていないからこそ、状況の変化に応じて最も安全で快適な環境へと柔軟に生活を再構築できるのです。

まとめ:持たないことで得られる「究極の機動力と生活防衛」

車や持ち家を持たない生き方は、世間一般からは「我慢」や「妥協」と見なされることがあります。

しかし、私にとっては、それらを手放すことで得られる「キャッシュフローの安定」「資産の流動性」、そして何より「災害時に固定資産を失う恐怖や復旧の重圧から解放される心の平穏」と「有事の際に身一つで移動できる圧倒的な機動力」の方が、はるかに価値の高いものです。

災害の多い日本において、特定の土地や高額な動産に人生と資産を縛り付けず、流動性の高い形で保持し、住居や車は必要な分だけサービスとして利用する。

この身軽さと選択肢の多さこそが、不確実な時代において自分と家族の自由、安全、そして心の平穏を守るための、最も強固で合理的な生活防衛戦略だと考えています。

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