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親を扶養に入れる年末調整:2026年年金172万基準と75歳以上の注意点

10月下旬から11月にかけて勤務先から年末調整の案内が届く時期になると、高齢の親と暮らしている方や仕送りをしている方が気になるのが「親を扶養控除の対象に入れられるか」という点です。

私自身、独身のITエンジニアとして働きながら70代の母親と同居し、扶養に入れています。2026年(令和8年分)の年末調整では、税制改正によって扶養親族の合計所得金額要件が従来の48万円以下(令和7年分は58万円以下)から「62万円以下」へと引き上げられました。これにより、65歳以上で収入が公的年金のみの親であれば、年間の年金収入が「172万円以下」まで扶養控除の対象に入るよう基準が拡大しています。

一方で、親が75歳を迎えて後期高齢者医療制度へ移行するタイミングでは、「健康保険の扶養から外れたら年末調整の扶養控除も使えなくなるのではないか」「親の介護保険料や後期高齢者医療保険料も自分の年末調整で控除できるのか」といった疑問や誤解が数多く生じます。

この記事では、母親を扶養している私の実体験をもとに、2026年分の年末調整における親の年金収入基準、75歳以上の老人扶養控除の仕組み、そして親の社会保険料を自分の年末調整で控除するための実務上の注意点を整理します。

2026年年末調整から親の年金収入基準が「172万円以下」に拡大

税法上の扶養控除(控除対象扶養親族)を適用するためには、対象となる親族の1年間(1月1日〜12月31日)の「合計所得金額」が一定以下である必要があります。

2026年(令和8年分)からは、基礎控除の引き上げに連動して、扶養親族の合計所得金額要件が「62万円以下」へと緩和されました。

65歳以上の公的年金受給者における計算の内訳

親の収入が公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金など)のみである場合、年金収入の金額そのものではなく、そこから「公的年金等控除額」を差し引いた後の「雑所得の金額」が合計所得金額となります。

65歳以上の人には、公的年金等控除として最低110万円が適用されます。そのため、2026年分からの基準を当てはめると以下の計算になります。

項目改正前(令和6年分まで)令和7年分(2025年分)令和8年分(2026年分〜)
扶養控除の合計所得金額要件48万円以下58万円以下62万円以下
公的年金等控除(65歳以上・最低額)110万円110万円110万円
年金収入のみの場合の上限目安(65歳以上)158万円以下168万円以下172万円以下
年金収入のみの場合の上限目安(65歳未満)108万円以下118万円以下122万円以下

※公的年金以外にパート収入や不動産所得、確定申告した配当所得・一時所得などがある場合は、それらを合算した合計所得金額が62万円以下であるかどうかで判定します。なお、遺族年金や障害年金は非課税所得であるため、収入や合計所得金額の判定には含まれません。

これまで親の年金収入が160万円〜170万円前後あったために扶養控除の対象から外れていた家庭でも、2026年分の年末調整からは新たに扶養控除の対象に含められるケースが生まれています。

老人扶養親族(70歳以上)の控除額と節税インパクト

扶養する親の年齢がその年の12月31日時点で70歳以上である場合、「老人扶養親族」として通常の扶養控除(所得税38万円・住民税33万円)よりも手厚い控除が適用されます。

区分要件(70歳以上の直系尊属)所得税の控除額住民税の控除額合計税率30%(所得税20%+住民税10%)での軽減目安
同居老親等自身または配偶者の父母・祖父母等で同居している場合58万円45万円年間約16万1,000円
同居老親等以外別居していて仕送り等で生計を一にしている場合48万円38万円年間約13万4,000円

※所得税の軽減額には別途2.1%の復興特別所得税が加算されます。また、病気の治療のために入院している場合は、1年以上にわたる長期入院であっても「同居」に該当するものとして扱われますが、老人ホーム等の介護施設へ入所している場合は居所が移るため「同居老親等以外(別居)」の区分となるのが原則です。

私のように母親と同居している場合、所得税で58万円、住民税で45万円の所得控除が適用されます。所得税率20%・住民税率10%の会社員であれば、年末調整の扶養控除等申告書に母親の情報を正しく記載するだけで、年間約16万円もの税負担が軽減される計算になります。

要注意!「健康保険の扶養」と「年末調整(税金)の扶養控除」は別物

親の扶養に関して最も混同されやすいのが、勤務先の健康保険組合や協会けんぽにおける「社会保険(健康保険)の被扶養者」と、年末調整や確定申告における「税法上の扶養親族(老人扶養控除)」の違いです。

この2つは根拠となる法律も判定基準も完全に独立しています。

比較項目税法上の扶養(年末調整・確定申告)健康保険の扶養(会社の社会保険)
目的・効果子(納税者)の所得税・住民税が安くなる親の健康保険料が0円になる
65歳以上の収入基準合計所得62万円以下(年金のみなら172万円以下)年間収入180万円未満(60歳以上または障害者の場合)
遺族年金・障害年金の扱い非課税のため判定に含めない生計維持の判定収入に含める
75歳到達時の扱い75歳以上でも要件を満たせば継続して控除対象75歳の誕生日に強制脱退(後期高齢者医療制度へ移行)
手続き窓口・時期毎年の年末調整(扶養控除等申告書)または確定申告事由発生時に勤務先の人事・健保窓口へ届出

※健康保険の被扶養者認定における詳細な要件(同居・別居時の仕送り基準額や必要書類など)は、加入している健康保険組合や協会けんぽによって運用規約が異なるため、事前の確認が必要です。

75歳以上の親(後期高齢者)でも老人扶養控除は継続できる

よくある誤解として、「親が75歳になって後期高齢者医療制度に移行し、会社の健康保険の扶養から外れたため、年末調整の扶養控除からも外してしまった」というケースがあります。

75歳になると健康保険の被扶養者資格は自動的に喪失しますが、所得税・住民税における「老人扶養親族」には75歳の上限はありません。75歳以上であっても、生計を一にしており、親の合計所得金額が62万円以下(公的年金のみなら172万円以下)であれば、引き続き年末調整で同居老親等(58万円)または別居老親(48万円)の扶養控除を適用できます。

健康保険証の返却手続きと、年末調整の扶養控除等申告書の記載を混同して控除漏れを起こさないよう注意が必要です。親が75歳になる際の手続きや医療保険料の仕組みについては、以下の記事で詳しく整理しています。

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親の介護保険料・後期高齢者医療保険料を年末調整で控除する条件

親を扶養に入れている場合、もう一つ確認しておきたいのが「親の介護保険料(65歳以上)や後期高齢者医療保険料(75歳以上)を、子の年末調整(保険料控除申告書)で社会保険料控除として申告できるか」という論点です。

結論から言うと、親の保険料が「どのように支払われているか」によって可否が明確に分かれます。

原則:年金天引き(特別徴収)のままだと子の年末調整では控除できない

所得税法上の社会保険料控除は、「自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合」に、実際に支払った人の所得から控除できる制度です。

しかし、65歳以上の介護保険料や75歳以上の後期高齢者医療保険料は、年額18万円以上の年金を受給している場合、原則として親の年金から自動的に天引き(特別徴収)されます。国税庁の取り扱い上、年金から天引きされている保険料は「年金受給者本人(親)が支払ったもの」とみなされるため、同居して生活費を支えている子であっても、子の年末調整や確定申告で社会保険料控除に含めることはできません。

親の年金収入が低く、親自身に所得税や住民税が課税されていない場合、親の側で社会保険料控除が発生しても節税効果はゼロとなり、控除枠がそのまま無駄になってしまいます。

子名義の口座振替(普通徴収)へ変更すれば控除対象になる

この問題を解決するには、親が居住する市区町村の窓口で保険料の納付方法を年金天引き(特別徴収)から「口座振替(普通徴収)」へ変更する申出手続きを行い、引き落とし口座を「子(自分)名義の銀行口座」に指定します。

親の保険料の支払方法税務上の支払者子の年末調整での社会保険料控除
親の公的年金からの天引き(特別徴収)親本人控除できない(対象外)
親名義の銀行口座からの口座振替親本人控除できない(原則対象外)
生計を一にする子名義の銀行口座からの口座振替(普通徴収)子(納税者)控除できる(その年に引き落とされた実額)

※年金天引きから口座振替への変更手続きの方法や、後期高齢者医療保険料・介護保険料それぞれの変更可否・申出から切り替わるまでの所要期間(通常2〜3か月程度)は自治体によって異なるため、事前に親の居住地の市区町村窓口で確認が必要です。

子名義の口座から実際に引き落とされた保険料であれば、年末調整の「給与所得者の保険料控除申告書」の社会保険料控除欄に記入して全額を所得控除できます。なお、年末調整の申告書にはその年の1月1日〜12月31日までに支払う(引き落とされる)金額を記載し、証明書の添付は原則不要ですが、自治体から届く納付額通知書や通帳の引落記録は手元で確認・保管しておきます。

別居の親を扶養に入れる場合の「生計を一にする」証明と注意点

親と別居している場合でも、常に生活費や療養費等の仕送り(送金)を行っており「生計を一にしている」実態があれば、老人扶養控除(同居老親等以外の48万円)の対象になります。

ただし、別居の親を扶養に入れる際は以下の2点に留意が必要です。

  1. 送金事実を記録に残すこと
    帰省時に現金を手渡ししているだけだと、税務署や勤務先から「生計を一にしている事実」の確認を求められた際に客観的な証明ができません。親名義の銀行口座へ定期的に振り込みを行い、通帳やネットバンキングの振込明細を残しておくのが確実です。
  2. 兄弟姉妹間で重複して扶養控除を受けないこと
    1人の親を複数の子ども(長男と次男など)が同時に扶養親族として申告することはできません。複数人で仕送りを分担している場合でも、扶養控除を適用できるのはそのうちの1人のみとなります。事前に家族間で誰の扶養に入れるかを決めておく必要があります。

私が毎年の年末調整で母親の扶養・保険料について確認している手順

私が毎年10月〜11月の年末調整シーズンに行っている確認作業は、以下の3ステップに集約されます。

  1. 母親の年間年金収入の確認
    日本年金機構から届く年金額改定通知書や振込通知書をもとに、その年の公的年金収入見込額を確認します。母親は基礎年金中心で上限(172万円)より十分に低いため、所得見積額を「0円」として扶養控除等申告書の「同居老親等」にチェックを入れます。
  2. 私の口座から支払った母親分の社会保険料の集計
    私の銀行口座から口座振替で支払っている母親の保険料について、1月〜12月の年間引落額を集計し、保険料控除申告書の「社会保険料控除」欄に入力します。
  3. 医療費通知データの確認(翌年2月の確定申告準備)
    医療費控除は年末調整では手続きできないため、母親の通院費や薬代についてはマイナポータルの「代理人設定」を通じて翌年2月9日以降にe-Taxで自動集約し、確定申告で還付を受けています。

2026年の税制改正と母親扶養の全体的な関係や、マイナポータルで家族の医療費を自動集約する手順については、以下の記事もあわせて参考にしてください。

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まとめ

2026年(令和8年分)の年末調整では、扶養控除の合計所得金額要件が62万円以下に緩和されたことで、65歳以上で公的年金のみの親であれば「年金収入172万円以下」まで扶養控除の対象となります。

  • 70歳以上の親を扶養に入れると、同居老親等で58万円(住民税45万円)、別居でも48万円(住民税38万円)の大きな所得控除が受けられる
  • 親が75歳になって後期高齢者医療制度へ移行し「健康保険の扶養」から外れても、税法上の「老人扶養控除」は引き続き適用できる
  • 親の介護保険料や後期高齢者医療保険料は、年金天引きのままだと子の控除にできないため、自治体の窓口で子名義の口座振替(普通徴収)へ変更することで子の社会保険料控除として活用できる

制度の仕組みと「健康保険と税金のルールの違い」を一度整理しておけば、毎年の年末調整で迷うことなく確実に家計の税負担を抑えることができます。

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