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特定口座の損出しはいつまで?新NISAと損益通算できない罠と確定申告判断

11月から12月にかけて、株式やETF、投資信託を運用している個人投資家が必ず確認しておきたいのが、年内の「損出し(損益通算)」と確定申告の判断です。

特定口座(源泉徴収あり)で配当金や分配金を受け取っていたり、年内に利益確定した銘柄があったりする場合、含み損を抱えている銘柄を年内に一度売却して損失を確定させることで、すでに源泉徴収された20.315%の税金を取り戻すことができます。

しかし、「新NISA口座で含み損が出ている銘柄を売れば特定口座の利益と相殺できるのか」「年末の何月何日までに売却注文を出せば今年の損益に入るのか」「3年間の繰越控除を使うために確定申告をするとどんな副作用があるのか」といったルールを正確に把握していないと、思わぬ失敗につながります。

私は2004年から22年以上株式投資を続け、現在は総資産1億円を運用しながら年間約130万円(税引後見込み)のETF分配金を受け取っています。この記事では、2026年年末の損出し最終取引日、新NISAと特定口座の損益通算ルール、そして確定申告(繰越控除)を行うべきかどうかの実践的な判断基準を整理します。

年内の「損出し(損益通算)」で税金が戻る仕組み

上場株式やETF、投資信託の譲渡益(売却益)や配当・分配金には、特定口座(源泉徴収あり)において20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%+住民税5%)の税金が源泉徴収されています。

同じ年(1月1日〜12月31日)の間に、一方で利益や配当金が発生し、もう一方で含み損を抱えている銘柄がある場合、含み損の銘柄を年内に売却して「実現損(譲渡損失)」に変えることで、利益・配当金と相殺(損益通算)されます。

損出しによる還付金の具体例

たとえば、特定口座(源泉徴収あり)で以下のような状況だったとします。

項目損出し前含み損30万円を年内に損出し(売却)した場合
年間の配当・分配金および譲渡益(税引前)100万円100万円
年間の確定譲渡損失0円△30万円
損益通算後の課税対象額100万円70万円
年間の税負担(税率20.315%)20万3,150円14万2,205円
還付される源泉徴収税額0円+6万945円

含み損30万円を年内に確定させるだけで、すでに天引きされていた税金のうち約6万945円が証券口座へ還付されます。もしその銘柄を来年も保有し続けたい場合は、売却した翌営業日以降に買い戻す(クロス取引・現物買い戻し)ことで、ポートフォリオの中身を維持したまま取得単価を引き下げ、手元のキャッシュ(還付金)を増やすことが可能です。

※同じ銘柄を「同一受渡日(同じ営業日)」に売却して買い戻すと、税法上の移動平均法により売却前の取得単価と買い戻し価格が平均化され、意図した通りの損失額が確定しない場合があります。買い戻しを行う際は、売却約定日の翌営業日以降に注文を出すのが鉄則です。

2026年(令和8年)の損出しはいつまで?受渡日基準の最終取引日

年末の損出しで最も多い失敗が、「12月30日の大納会に売却注文を出したのに、翌年(2027年)分の取引扱いになってしまった」というケースです。

税法上、株式や投資信託の損益がいつの年分に属するかは、注文が成立した「約定日」ではなく、決済が完了する「受渡日(うけわたしび)」を基準に判定されます。

2026年12月の資産クラス別・最終約定スケジュール

国内株式・ETFの受渡日は「約定日から起算して2営業日目(T+2)」となります。2026年の大納会(年内最終営業日)は12月30日(水)であるため、2026年内に受渡しを完了させるための最終約定日は以下の通りとなります。

資産クラス2026年内受渡しの最終約定日(目安)受渡日注意点
国内株式・国内ETF・REIT2026年12月28日(月)15:30まで2026年12月30日(水)12月29日(火)・30日(水)の約定分は2027年1月受渡し(2027年分)となる
米国株式・米国ETF2026年12月24日(木)〜25日(金)早朝頃2026年12月29日〜30日頃米国市場のクリスマス休場(12月25日)および証券会社の国内受渡日処理により異なる
投資信託(国内・海外)2026年12月18日(金)〜24日(木)頃ファンドごとに約定から3〜6営業日後海外資産を含む投資信託は注文から受渡しまで1週間前後かかる場合があるため12月中旬までに確認必須

※米国株式や投資信託の年内最終取引日時(注文締切時間)は、利用している証券会社や個別ファンドの目論見書(約定日・受渡日の営業日カウント)によって異なるため、12月中旬までに必ず各証券会社の年末年始スケジュール案内を確認する必要があります。

最大の注意点:新NISA口座の損失は特定口座と損益通算できない

2024年から始まった新NISA(つみたて投資枠・成長投資枠)で株式や投資信託を運用している方が絶対に押さえておくべきルールが、「NISA口座の損益は他の口座と一切通算できない」という点です。

口座の組み合わせ損益通算の可否3年間の繰越控除
同一の特定口座(源泉徴収あり)内の譲渡損と譲渡益・配当自動で通算される(確定申告不要)確定申告が必要
A証券の特定口座の譲渡損と、B証券の特定口座の譲渡益・配当確定申告により通算できる確定申告により可能
新NISA口座の譲渡損と、特定口座・一般口座の譲渡益・配当通算できない(一切不可)繰越控除も不可
特定口座の譲渡損と、新NISA口座の譲渡益・配当通算する意味がない(NISA側は元々非課税)特定口座側の損失のみ確定申告で繰越可能

新NISA口座は「利益が出ても非課税」である裏返しとして、「損失が出ても税務上はないもの(ゼロ)」として扱われます。

そのため、新NISA口座内で含み損を抱えている銘柄を年末に売却(損出し)しても、特定口座で受け取った配当金や譲渡益の税金(20.315%)は1円も戻ってきません。それどころか、売却した分のNISA非課税枠が復活するのは「翌年以降」であり、かつ年間の非課税投資枠(成長投資枠240万円・つみたて投資枠120万円)の範囲内でしか再投資できないため、安易なNISA口座での損切りは非課税枠の消化ペースを乱す原因になります。

特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告なしで配当金と自動通算される条件

1つの証券会社の「特定口座(源泉徴収あり)」の中で取引を完結させている場合、その口座内で発生した株式・ETFの売却損と、同じ口座内で受け取った配当・分配金は、証券会社が年末に自動で損益通算してくれます。確定申告を行う必要はなく、翌年1月初旬に源泉徴収税の還付金が証券口座へ自動的に振り込まれます。

ただし、この自動損益通算を受けるためには、配当金の受取方法を「株式数比例配分方式(証券口座で受け取る方式)」に設定していることが必須条件です。

  • 株式数比例配分方式:特定口座内の譲渡損と配当金が自動で損益通算される(確定申告不要)
  • 登録配当金受領口座方式(銀行口座振込)・配当金領収証方式(郵便局等の窓口受取):特定口座へ配当金が入らないため自動通算されず、損益通算するには自分で確定申告を行う必要がある

なお、米国ETF(VTやVYMなど)の分配金についても、国内の特定口座(源泉徴収あり)で受け取っていれば、同じ特定口座内の株式・ETF売却損(円換算ベース)と自動通算され、日本国内で源泉徴収された20.315%分の税金が還付されます(米国現地で源泉徴収された10%分は損益通算では戻らず、別途外国税額控除の領域となります)。

引ききれない損失を「3年間繰越控除」するメリットと2つの罠

年内の利益や配当金と相殺してもまだ譲渡損失(マイナス)が残る場合、または複数の証券会社の特定口座間で損益を合算したい場合は、翌年2月〜3月に確定申告を行うことで「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除(最長3年間)」を利用できます。

これを使えば、今年のマイナスを翌年以降3年間の譲渡益や配当金から差し引くことができますが、実務上は以下の2つの落とし穴に注意が必要です。

1. 取引が一切ない年も「毎年連続して確定申告」が必要

3年間の繰越控除を継続するためには、損失を出した年だけでなく、その後の3年間も「毎年連続して確定申告書(および上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除明細書)を提出すること」が要件となっています。

たとえ翌年に株式の売却を一度も行わなかった年であっても、繰越控除の申告を1回でも忘れると、残っていた損失の繰越枠はその時点で消滅してしまいます。

2. 国民健康保険・後期高齢者医療制度の加入者は保険料跳ね上がりに注意

会社員(健康保険組合や協会けんぽの加入者)であれば、確定申告で特定口座の損益通算や繰越控除を行っても、毎月の健康保険料や厚生年金保険料は標準報酬月額(給与)で決まるため影響はありません。

しかし、早期退職(FIRE)後や自営業・年金生活者で「国民健康保険」や「後期高齢者医療制度」に加入している場合は注意が必要です。令和6年分(2024年分)の確定申告から所得税と住民税の課税方式が一致化されたため、繰越控除や損益通算のために特定口座の利益や配当を確定申告に含めると、住民税の総所得金額等や合計所得金額の算定を通じて、翌年の国民健康保険料・介護保険料・医療費の窓口負担割合に影響が及ぶケースがあります。

特に「過去の繰越損失を使って今年の利益・配当の税金をゼロにした場合」でも、扶養判定等に使われる「合計所得金額(繰越控除を差し引く前の金額)」が増えてしまい、家族の扶養から外れてしまう罠が存在します。特定口座と社会保険料・配当税制の詳しい関係は以下の記事で解説しています。

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年間配当130万円の私が「損出し」と確定申告に対してとっているスタンス

私自身は現在、VT(全世界株)、iSTOPIX(東証株価指数)、VYM(米国高配当株)の3本のインデックス・高配当ETFをコアとして長期保有しており、短期的な個別株の売買は行っていません。

2004年から積み上げてきたETFは長期保有によって大きな含み益の状態にあるため、現在私の特定口座では年末に「損出し」をする対象銘柄そのものがない状態です。

ただし、もし直近で買い増した特定口座のロットに一時的な含み損が発生している年があれば、以下の基準でシンプルに処理します。

  1. 1つの特定口座(源泉徴収あり・株式数比例配分方式)の枠内で、年間約130万円の分配金と相殺できる範囲の損出しにとどめ、確定申告不要の自動還付で完結させる
  2. 複数口座にまたがる確定申告や、翌年以降の連続申告義務が生じる「繰越控除」は、管理コストと将来の国保移行時のリスクを避けるため原則として使わない
  3. 新NISA口座の保有分については、相場の変動で一時的に含み損になっても損益通算ができないため、一切売却せず長期保有を貫く

「確定申告の手間を増やさず、特定口座の自動損益通算機能の範囲内で税還付を享受する」というのが、20年以上運用を続けてきた私の結論です。

まとめ

年末の損出し(損益通算)と確定申告の準備にあたっては、以下のポイントを事前に確認しておくことが重要です。

  • 2026年分の国内株・ETFの損出し最終約定日は「2026年12月28日(月)」(大納会12月30日の2営業日前)。投資信託や米国株はさらに早いため12月中旬までに確認する
  • 同じ銘柄を買い戻す場合は、取得単価の平均化を防ぐため必ず「売却約定日の翌営業日以降」に注文を出す
  • 新NISA口座で発生した損失は、特定口座の利益や配当金と一切損益通算できない
  • 1つの特定口座(源泉徴収あり)で「株式数比例配分方式」を選んでいれば、確定申告なしで年末に配当金と売却損が自動通算される
  • 3年間の繰越控除や複数口座の損益通算で確定申告を行う場合は、毎年連続申告の義務や「合計所得金額(繰越控除前)」の増加による扶養・国保への影響を確認する

年末の間際になって慌てないよう、11月〜12月上旬のうちに特定口座の年間損益状況と配当金の受取方式を一度点検しておくのが確実です。

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