FIRE後の資産枯渇を防ぐ!ポートフォリオ取り崩しシミュレーション

早期退職(FIRE)を目指す個人投資家にとって、最大の不安は「リタイア後に資産が枯渇してしまわないか」という点です。

年間支出の25倍の資産を用意して年4%ずつ取り崩す「4%ルール(トリニティ・スタディ)」は広く知られています。しかし、この理論は過去の長期平均利回りを前提としたものであり、もしリタイア直後に大暴落が直撃した場合の破壊力までは十分に実感されていないのが現実です。

どれほど綿密に計算して退職しても、運悪く相場低迷期からスタートしてしまうと、資産は驚くべきスピードで削られていきます。

そこで今回は、2026年5月に総資産1億円に到達した私自身の生活費(月25万円)をベースに、自作のポートフォリオシミュレーター(モンテカルロ法・5,000回試行)を使って、資産配分や働き方の違いによる「FIRE後の資産枯渇リスク」を徹底検証しました。

シミュレーションの前提条件:FIRE生活の基本パラメータ

今回の検証では、生活費を取り崩しながら30年間生活する現実的なシナリオとして、以下の基本パラメータを設定しました。

基本パラメータ:

  • 初期資産:1億円(100,000,000円)
  • 月次支出額:25万円(年間300万円、生活費ベース)
  • 検証期間:30年間(50歳〜80歳などを想定)
  • 試行回数:5,000回(モンテカルロ法による乱数試行)

比較するアセット配分:

  • 配分A(全世界株式100%):VT系全世界株式 100%
  • 配分B(王道バランス 80/20):全世界株式 80% + 米国総合債券 20%
  • 配分C(防衛型バランス 60/40):全世界株式 60% + 米国総合債券 40%

比較する生活スタイル:

  • スタイル1:完全リタイア(月次追加投資 0円、労働収入なし)
  • スタイル2:サイドFIRE(月次追加投資 10万円、副業や配当等による収入あり)

完全リタイア(月支出25万)の検証:株式100%は枯渇する?

まず、一切働かずに月25万円(年300万円)を資産から取り崩し続ける「完全リタイア(月積立0円)」のケースを検証します。

30年後の試算結果一覧(初期1億円・月支出25万円・完全リタイア):

配分A:全世界株式100%

  • 悲観シナリオ(下位10%):0円(途中で資産が枯渇)
  • 中央値(50%ライン):約1億3,697万円
  • 楽観シナリオ(上位10%):約7億2,138万円

配分B:全世界株式80% + 債券20%

  • 悲観シナリオ(下位10%):約799万円(枯渇をギリギリ回避)
  • 中央値(50%ライン):約1億4,531万円
  • 楽観シナリオ(上位10%):約5億7,971万円

配分C:全世界株式60% + 債券40%

  • 悲観シナリオ(下位10%):約2,378万円(元本をしっかり維持)
  • 中央値(50%ライン):約1億4,777万円
  • 楽観シナリオ(上位10%):約4億7,897万円

このシミュレーション結果から、FIRE取り崩しにおける極めて重大な事実が浮き彫りになります。

株式100%では下位10%の相場で資産がゼロになる

全世界株式100%で運用しながら取り崩す場合、中央値(50%ライン)では約1億3,697万円に増えており、楽観シナリオでは7億円を超えます。 しかし、運悪く相場低迷期からリタイアが始まってしまった「悲観シナリオ(下位10%)」では、30年の途中で資産が完全に底をつき、0円になってしまいます。

これがいわゆる「収益率の順番リスク(Sequence of Returns Risk)」の怖さです。 リタイア直後に暴落が直撃すると、大きく値下がりした株を生活費のために売却せざるを得ません。その結果、保有数量(口数)そのものが大きく削られ、その後に相場が急回復しても資産が回復しきれなくなります。

債券を混ぜることで枯渇リスクが劇的に下がる

一方、債券を20%〜40%組み入れたポートフォリオでは、下落時の下落幅が小さく抑えられるため、暴落時の売却ダメージが大幅に緩和されます。

株式80%債券20%では下位10%でも約799万円が手元に残り、株式60%債券40%にすると下位10%でも約2,378万円の資産が維持されます。 しかも、中央値(50%ライン)を見ると、株式60%債券40%(約1億4,777万円)の方が、株式100%(約1億3,697万円)よりも高い数値を示しています。取り崩しフェーズにおいて「暴落の谷を浅くすること」がいかに重要かが数字で証明されています。

サイドFIRE(月10万円収入)の驚異的な防衛効果

次に、「月10万円の労働収入や副業収入、配当収入を得ながら、生活費25万円のうち15万円だけを資産から取り崩す」というサイドFIREスタイルを検証します。 (これは自作シミュレーターの初期値である「初期1億円・月支出25万・月積立10万・インフレ率1%」の条件に合致します)

30年後の試算結果一覧(初期1億円・月支出25万・月収入10万・インフレ1%):

配分A:全世界株式100%

  • 悲観シナリオ(下位10%):約1,896万円(枯渇を回避)
  • 中央値(50%ライン):約1億9,250万円
  • 楽観シナリオ(上位10%):約8億9,299万円

配分B:全世界株式80% + 債券20%

  • 悲観シナリオ(下位10%):約3,799万円
  • 中央値(50%ライン):約1億9,583万円
  • 楽観シナリオ(上位10%):約7億2,127万円

配分C:全世界株式60% + 債券40%

  • 悲観シナリオ(下位10%):約5,387万円
  • 中央値(50%ライン):約2億17万円
  • 楽観シナリオ(上位10%):約5億5,581万円

「月10万円」のキャッシュフローが人生の安全弁になる

月10万円の収入があるだけで、全世界株式100%であっても悲観シナリオでの資産枯渇を回避できるようになります。

さらに株式80%債券20%であれば、下位10%の最悪期でも約3,799万円が手元に残り、中央値では約1億9,583万円まで資産が成長します。 完全リタイアとサイドFIREでは、最悪シナリオにおける手残り資産に3,000万円以上の差が生まれます。

無理に生活費の全額を資産からの取り崩しに頼るのではなく、自分の好きな仕事や副業、あるいは高配当ETFからの分配金で「月5万〜10万円」のキャッシュフローを確保しておくことが、FIREの持続性を飛躍的に高めることが分かります。

自分のリタイア条件で試算できる「自作シミュレーター」はこちら

今回の検証で使用したモンテカルロシミュレーターは、以下のWebページで公開しています。

ポートフォリオシミュレーター|資産配分のリスク・推移を無料試算
モンテカルロ法を用いた本格的なポートフォリオシミュレーター。目標とするアセットアロケーションのリスク・期待リターンの計算から、将来の資産推移予測(楽観・悲観シナリオ)まで無料で試算できます。

ご自身の想定資産額、毎月の支出予定額、サイドFIREでの見込み収入、インフレ率などを自由に入力し、将来のパーセンタイル推移をシミュレーションできます。

退職後の生活設計を立てる際は、平均値だけでなく必ず「悲観シナリオ(10%ライン)」で資産が残るかどうかをチェックしてみてください。

20年投資家・ITエンジニアの結論:FIRE後を生き抜くポートフォリオ設計

20年以上の相場を経験し、1億円を達成した立場から、FIRE後の資産防衛に関して強く実感しているのは以下の3点です。

1. 資産形成期と取り崩し期では「ゲームのルール」が変わる

資産を増やすフェーズでは、暴落が来ても給与で買い増せるため「株式100%」が最も合理的です。 しかし、取り崩しフェーズに入った瞬間に、ゲームのルールは「リターン最大化」から「枯渇の回避(ゲームオーバーの防止)」へと完全に切り替わります。取り崩し期に株式100%を維持することは、下位10%の相場を引いたときに致命傷になり得ます。

2. 安全資産(債券・現金)のクッションを20〜40%確保する

相場急落時にも生活費を削らず、株式を安値で叩き売らないためには、2〜3年分の生活防衛資金(現金)に加え、ポートフォリオ内に20%〜40%の債券を組み入れておくことが不可欠です。 シミュレーションが示す通り、債券を混ぜることでリターンを大きく落とすことなく、最悪期の資産残高を大きく底上げできます。

3. 完全リタイアより「小さな労働や配当」を組み合わせる

生活費のすべてを取り崩しに委ねると、相場が下落するたびに大きな精神的ストレスを受けます。 月数万円〜10万円でも自分のペースで稼げる仕事や配当収入を持っておくことで、取り崩しのプレッシャーは劇的に軽減されます。

精神的な平穏を保ちながら長期のFIRE生活を楽しむためにも、ぜひシミュレーターで複数のシナリオを試算し、自分にとって安全マージンのあるポートフォリオを設計してみてください。

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