
新NISAを活用した資産形成において、最も多くの人が悩むのが「どのようなポートフォリオ(資産配分)を組むべきか」という問題です。
投資信託の「オルカン(全世界株式)」や「S&P500」1本に集中投資するスタイルが王道として広まる一方で、「本当に株式1本でいいのか」「債券や金を混ぜた方が安心なのではないか」「配当金が出る高配当株や日本株も組み合わせたい」と考える方も増えています。
資産配分に唯一無二の正解はありませんが、感覚だけで配分を決めてしまうと、暴落時に予期せぬ下落に動揺して途中で運用をやめてしまう原因になります。
そこで今回は、自作のポートフォリオシミュレーター(モンテカルロ法・5,000回試行)を使って、代表的な3つのポートフォリオ案の期待リターン、リスク、30年後の資産推移を徹底比較し、自分に合った「黄金比」の見つけ方を検証しました。
比較する3つの新NISAポートフォリオ案
今回の検証では、新NISAで検討されることが多い代表的な3つのアプローチを比較対象として設定しました。
パターン1:オルカン集中型(全世界株式100%)
- 全世界株式(VT系):100%
- 特徴:成長力と低コストを最優先した、新NISAの定番スタイル。
パターン2:マルチアセット防衛型(株式70% + 債券20% + 金10%)
- 全世界株式:70%
- 米国総合債券(AGG等):20%
- 金(ゴールド):10%
- 特徴:株式に加えて値動きの異なる債券と金を組み入れ、暴落時の下落幅を抑えるバランス重視の黄金比。
パターン3:株式・インカム・為替分散型(全世界株50% + 高配当30% + 日本株20%)
- 全世界株式:50%
- 米国高配当株(VYM等):30%
- 国内株式(TOPIX等):20%
- 特徴:定期的な分配金(インカム)を得つつ、日本円建ての資産(生活費基盤)も確保する、20年投資家・当ブログ運営者の実践に近いスタイル。
共通の検証パラメータ: 第1弾の検証記事と条件を揃え、現実的な積立モデルとして以下を設定しています。
- 初期資産:1,000万円
- 毎月の追加積立:5万円
- シミュレーション期間:30年間(元本合計は2,800万円)
- 試行回数:5,000回(モンテカルロ法)
- アセット前提値(年率):
- 全世界株式:期待リターン 5.5%、リスク 18.0%
- 米国総合債券:期待リターン 3.5%、リスク 9.0%
- 金(Gold):期待リターン 3.5%、リスク 18.0%
- 米国高配当株:期待リターン 5.0%、リスク 17.0%
- 国内株式(TOPIX):期待リターン 4.5%、リスク 16.0%
期待リターンとリスクの比較:分散でどう変わるか?
ポートフォリオ理論に基づき、3つのパターンの期待リターンとリスク(標準偏差)を計算した結果は以下の通りです。
期待リターンとリスクの計算結果:
マルチアセット型のリスク削減効果が圧倒的
最も際立っているのはパターン2(マルチアセット防衛型)のリスク低下です。 債券20%と金10%を組み入れることで、期待リターンは年5.50%から4.90%へとわずか0.60%ポイント下がるだけですが、リスクは18.00%から13.41%へと約4.59%ポイント(約25.5%)も劇的に低下します。
金は株式との相関係数が0.10と極めて低く、債券も相関が0.20と低いため、資産同士が互いの値動きを相殺し合う強力な分散効果が発揮されます。
株式同士の組み合わせ(パターン3)でもリスクは低減する
パターン3のように、すべて株式クラスであっても、全世界株に高配当株や日本株を組み合わせることで、リスクは18.00%から15.80%へと約2.2%ポイント低下します。米国のハイテク大型株だけに偏らない安定感を持たせることができます。
モンテカルロ法で検証!30年後の資産推移とパーセンタイル
5,000回の乱数シミュレーションによって算出した、元本2,800万円に対する30年後の資産推移結果は以下の通りです。
30年後の試算結果一覧:
パターン1:オルカン集中型(全世界株式100%)
- 悲観シナリオ(下位10%):約2,678万円(元本割れリスクあり)
- 中央値(50%ライン):約6,758万円
- 楽観シナリオ(上位10%):約1億9,798万円
パターン2:マルチアセット防衛型(株式70% / 債券20% / 金10%)
- 悲観シナリオ(下位10%):約3,351万円(元本をしっかり維持)
- 中央値(50%ライン):約6,804万円
- 楽観シナリオ(上位10%):約1億4,759万円
パターン3:株式・インカム・為替分散型(全世界50% / 高配当30% / 日本株20%)
- 悲観シナリオ(下位10%):約2,935万円(元本を維持)
- 中央値(50%ライン):約6,608万円
- 楽観シナリオ(上位10%):約1億6,792万円
このシミュレーション結果から、アセットアロケーションに関する極めて示唆に富むポイントが見えてきます。
中央値ではマルチアセット型がオルカンと互角
注目すべきは「中央値(50%ライン)」です。 オルカン集中型が約6,758万円であるのに対し、マルチアセット防衛型は約6,804万円と、ほぼ互角(むしろわずかに上回る)数値を記録しています。 これは、下落相場での資産の落ち込みを抑えることで、複利効果の目減り(ボラティリティ・ドラッグ)が解消されるためです。「安全資産を入れると平均的な成果まで大きく劣後する」という心配は、長期投資においては杞憂であることが分かります。
暴落時の安心感はマルチアセット型が圧倒
相場低迷期を引いた「悲観シナリオ(下位10%)」では、マルチアセット防衛型が約3,351万円となり、オルカン集中型(約2,678万円)を約670万円も大きく上回ります。30年間積立を続けた結果として元本割れを避けられる安心感は絶大です。
楽観シナリオの上振れはオルカン集中型が強い
世界的な大好況が続いた「楽観シナリオ(上位10%)」では、オルカン集中型が約1億9,798万円と2億円近くまで伸び、マルチアセット型の約1億4,759万円を大きく引き離します。上昇相場の恩恵を極限まで取り込みたい場合は株式100%に軍配が上がります。
自分の積立額や配分比率を試せる「無料シミュレーター」
どの配分が自分に合っているかは、投資に回せる資金や年数、毎月の積立額によって異なります。
以下のシミュレーター画面から、ご自身の資産条件や気になるアセット配分を入力して試算してみてください。

全世界株、S&P500、NASDAQ、高配当株、TOPIX、金、米国債券、日本国債の8資産を自由に組み合わせて、期待リターンや将来のパーセンタイル推移を即座に計算できます。
20年投資家・ITエンジニアが考える「あなたの黄金比」の見つけ方
2004年から投資を続け、リーマンショックの洗礼を受けて総資産1億円に至った経験から、ポートフォリオ選びにおいて最も大切だと確信している基準は以下の通りです。
1. 20代〜30代・入金力重視なら「オルカン1本集中」
まだ資産形成の序盤であり、毎月の給与から継続して積立できる若い世代であれば、オルカン1本集中が最もシンプルで合理的です。下落相場が来ても安く買い増せるボーナス期間と割り切れるメンタルがあれば、楽観シナリオの上振れを最大化できます。
2. 暴落で夜も眠れない・手堅く増やしたいなら「マルチアセット防衛型」
資産が1,000万円を超えてきたり、相場の乱高下で日々の生活や仕事に集中できなくなったりするタイプの方には、株式70%+債券20%+金10%のようなマルチアセット型が最適です。 シミュレーションが証明している通り、長期の中央値はオルカンとほとんど変わらず、下位10%の悲観シナリオだけを手堅く防衛できます。
3. モチベーションと為替耐性を重視するなら「配当・国内株併用型」
取り崩し時期が近づいている方や、含み益だけでなく日々の生活を豊かにする「定期的な現金収入(配当)」が欲しい方には、全世界株に高配当ETFや日本株ETFを混ぜるスタイルが適しています。 日本円での生活費と外貨建て資産の為替乖離を抑えつつ、着実にインカムを受け取ることができます。
他人のポートフォリオを真に受けるのではなく、シミュレーターで「最悪の場合どこまで下がるか」を自ら確認し、納得して持ち続けられる配分こそが、あなたにとっての真の「黄金比」です。
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