新NISAで「乗り遅れ投資」しそうな時に、20年投資家が確認していること

はじめに

2024年に新NISAが始まってから、投資を取り巻く空気はかなり変わったと感じています。

以前よりも投資の話題を目にする機会が増えましたし、オルカン、S&P500、日本株、高配当株といった言葉も、かなり一般的になりました。日本証券業協会の調査でも、2025年に新NISAで金融商品を購入した人のうち、購入資金は「預金」や「給与所得」が大きな割合を占めています。新しいお金がNISAに流れ込んでいることがわかります。

この流れ自体は、長期的には良いことだと思っています。投資を始める人が増え、資産形成について考える人が増えるのは健全な変化です。

一方で、相場が上がっている時期に投資の話題が増えると、「自分だけ乗り遅れているのではないか」という焦りも生まれやすくなります。

私自身、2004年から投資を続けてきましたが、過去にも何度も似た空気を見てきました。相場が良いときほど、もっと買っておけばよかった、今からでも増やすべきではないか、という気持ちが出てきます。

今回は、新NISAや株高のニュースを見て「乗り遅れ投資」をしそうになったときに、私が確認していることを整理します。

乗り遅れ投資とは何か

私の中での乗り遅れ投資とは、「必要だから買う」のではなく、「周りが儲かっているように見えるから買う」状態のことです。

具体的には、次のような気持ちが強くなっているときです。

  • SNSやニュースで上昇相場の話題を見て焦る
  • 予定していた投資額を急に増やしたくなる
  • 自分のポートフォリオが地味に見えてくる
  • もっとリスクを取らないと損をする気がする
  • 現金を持っていることがもったいなく感じる

投資を続けていると、こういう感情は何度も出てきます。

私もまったく無縁ではありません。特に、資産額が大きくなってからは、相場が1%動くだけでも金額としてはかなり大きくなります。上昇相場で資産が増えると、気持ちが強気になります。逆に、買い増しが少なかった銘柄や地域が大きく上がると、逃した利益が目に入ります。

ただ、20年以上投資を続けてきて感じるのは、焦って買った投資ほど、下落時に耐えにくいということです。

買った理由が「自分の計画」ではなく「周りの空気」だと、相場が下がったときに持ち続ける根拠がなくなります。ここが一番危ないところだと考えています。

まず確認するのは、生活防衛資金が崩れていないか

私が最初に確認するのは、投資商品の期待リターンではありません。

生活防衛資金が自分のルールどおり残っているかです。

私の場合、生活費の2年分に家電などの買い替え積立50万円を加えた、約650万円を現金として確保する方針にしています。資産全体に対する比率ではなく、生活費の月数で管理しています。

この現金は、相場が良いときほど邪魔に見えます。

株式が上がっている時期に現金を持っていると、「このお金も投資していれば、もっと増えていたのに」と感じることがあります。ですが、リーマンショックやコロナショックを経験してからは、この現金があるから投資を続けられるのだと考えるようになりました。

暴落時に一番つらいのは、評価額が下がることだけではありません。

生活費や将来の支出に不安がある状態で、リスク資産も下がっていることです。この状態になると、理屈では長期投資が大事だとわかっていても、気持ちがついていきません。

そのため、新NISAで追加投資したくなったときも、まず現金のルールを崩していないかを見ます。生活防衛資金まで投資に回したくなっているなら、それは私にとって危険信号です。

次に確認するのは、買った後に下落しても持てるか

次に考えるのは、買った直後に20%から30%下落しても持ち続けられるかです。

これは机上の話ではありません。リーマンショックでは資産が大きく減りましたし、コロナショックでも短期間で一千万円以上の評価損が出ました。現在は総資産が1億円規模になっているため、同じ下落率でも金額のインパクトはさらに大きくなります。

新NISAは非課税という強いメリットがありますが、非課税だから損をしないわけではありません。

買った商品が値下がりすれば、評価額は普通に下がります。むしろ非課税枠を使っているぶん、「せっかくの枠で失敗した」という感情が乗りやすいかもしれません。

私が追加投資を考えるときは、買った後に下がった場面を先に想像します。

たとえば、100万円を追加で入れるなら、いったん70万円台になる可能性もあると考えます。そのときに、予定していた生活や資金計画が崩れないか。夜に何度も証券口座を見てしまう状態にならないか。そこを確認します。

上がったときのリターンより、下がったときの自分の行動を先に考えるようになったのは、長く投資を続けてきた中での変化です。

自分のポートフォリオ内で役割があるか

3つ目に確認するのは、その投資対象が自分のポートフォリオの中でどんな役割を持つかです。

私の現在の投資方針は、ETF中心です。大きく見ると、全世界株式、国内株式、高配当ETFを組み合わせています。VT、iSTOPIX、VYMなどを使いながら、成長と配当、外貨と円建て資産のバランスを取るようにしています。

ここで大事なのは、話題の商品を単体で見ないことです。

「オルカンが良い」「S&P500が強い」「高配当株が人気」といった話題はよく見ます。どれも投資対象として検討する価値はありますが、自分の資産全体の中で何を担当するのかが曖昧なまま買うと、後で管理しにくくなります。

私の場合は、次のように役割を分けて考えています。

  • 全世界株式は、世界経済全体への長期投資
  • 国内株式ETFは、将来の円建て生活費とのマッチング
  • 高配当ETFは、配当キャッシュフローの安定感
  • 現金は、生活防衛と暴落時の精神安定

新しく買いたいものが出てきたときは、このどこに入るのかを考えます。

役割が説明できないものは、私にとってはまだ買う理由が弱いです。流行っているから、最近の成績が良いから、という理由だけでは、長期で持ち続けるには足りません。

予定外の投資額になっていないか

4つ目は、投資額です。

投資判断で失敗するときは、商品選びだけでなく、金額の大きさで失敗することがあります。

少額なら経験として済むものでも、大きく入れすぎると生活やメンタルに影響します。私も過去に、相場が良い時期に気持ちが大きくなり、もう少し買っておけばよかったと後から考えたことは何度もあります。

ただ、20年以上投資を続けてきて思うのは、投資は一回の判断で勝負を決めるものではないということです。

資産形成は、収入、支出、入金、配当、相場変動が何年も積み重なってできていきます。一回の買い付けで完璧なタイミングを当てる必要はありません。

そのため、乗り遅れ感があるときほど、投資額を小さく分けるように考えます。

一括投資が合理的な場面もありますが、私の性格上、焦りが混ざっているときの大きな一括投資は向いていません。少しずつ買うほうが、後から相場が下がっても受け止めやすいです。

合理性だけでなく、自分が継続できる形かどうかを重視しています。

他人の利益ではなく、自分の必要額を見ているか

乗り遅れ投資が起きやすい理由の一つは、比較です。

SNSやブログを見ると、短期間で大きく資産を増やしている人がいます。新NISAの枠を早く埋めた人、特定の商品に集中して大きなリターンを得た人、若くしてFIREに近づいている人。そういう情報は刺激になります。

ただ、私の投資目的は、他人より高いリターンを出すことではありません。

私の場合は、独身で母親を扶養しながら、自分の生活を安定させることが目的です。現在は総資産1億円を達成し、年間配当は税引後で約130万円の見込みです。生活費を月25万円、年間300万円として見ると、配当だけで生活費の4割強をカバーしている状態です。

この数字を見ると、今の私に必要なのは、短期で資産を何倍にもすることではありません。

むしろ、すでに築いた資産を大きく崩さず、配当や現金を含めて、生活の安心感を高めていくことです。

他人のリターンを見ていると、いくら増えても足りない気持ちになります。自分の必要額を見ると、取るべきリスクの上限が見えてきます。

私はそこをかなり意識しています。

新NISAは使うが、焦って埋めることを目的にしない

新NISAは、長期投資家にとって非常に使いやすい制度だと感じています。非課税期間が無期限になり、成長投資枠とつみたて投資枠を組み合わせられるようになったことで、以前よりも設計しやすくなりました。

私もNISAは活用しています。

ただし、枠を早く埋めること自体を目的にはしていません。

非課税枠は大事ですが、それ以上に大事なのは、自分の生活と投資計画が破綻しないことです。NISA枠を埋めるために生活防衛資金を削ったり、予定外にリスクを取りすぎたりするなら、私にとっては本末転倒です。

投資は制度に合わせる部分もありますが、最終的には自分の生活に合わせるものだと考えています。

制度が良くなったからといって、自分のリスク許容度まで急に上がるわけではありません。ここを勘違いしないようにしています。

私が使っている確認リスト

新NISAや株高のニュースを見て、予定より投資を増やしたくなったとき、私は次のようなことを確認しています。

  • 生活防衛資金のルールを崩していないか
  • 買った直後に20%から30%下がっても持てるか
  • ポートフォリオ内で役割を説明できるか
  • 予定外に大きな金額を入れようとしていないか
  • 他人の利益ではなく、自分の必要額を見ているか
  • NISA枠を埋めること自体が目的になっていないか

このリストにすべて正解する必要がある、というよりも、自分の焦りを見つけるための確認です。

特に大事なのは、「なぜ今それを買うのか」を自分の言葉で説明できることです。

説明できないなら、いったん時間を置きます。1日置いても、1週間置いても、本当に必要な投資ならまだ選択肢に残っているはずです。逆に、時間を置いたら熱が冷めるものは、私の場合は買わなくてよかった投資であることが多いです。

まとめ:焦りを消すより、焦った時のルールを持つ

新NISAの広がりや株高のニュースを見て、焦りを感じること自体は自然だと思います。

私も20年以上投資を続けていても、完全に感情を消せるわけではありません。上がっているものを見ると欲しくなりますし、持っていない資産が大きく上がると、少し悔しい気持ちも出ます。

ただ、そこで投資方針を大きく崩さないために、確認する順番を決めています。

生活防衛資金、下落時の耐性、ポートフォリオ内の役割、投資額、自分の必要額。これらを見たうえで、それでも買う理由があるなら投資します。理由が弱いなら、見送ることも投資判断の一つです。

資産形成で大事なのは、常に最高のタイミングで買うことではなく、市場に残り続けることです。

私にとって新NISAは、焦って勝負するための制度ではなく、長く続ける投資を少し有利にしてくれる制度です。その距離感を忘れないことが、乗り遅れ投資を避ける一番の防御策だと考えています。